私はミルフィオーレのホワイトスペルに属する名前である。戦闘経験が少々と学力がそこそこあるので任務時はよく作戦係に任命される事が多数あります。 そんな私は全速力でアジトないを走っています。 理由は簡単です。私が使い物にならなくなって来ていることを白蘭様に知られてしまったから。 ほんとは白蘭様の部屋に呼びだされているのですがどうしてもあの人に会いたくない。 使えないものはいらないのです。 分かっているけれど「必要ない」と言われるのが嫌で逃げています。ブラックスペルの人も仲間だったホワイトスペルも私の顔を見るなり襲われるって勢いで追いかけてきて正直ストーカーに追われてる気分です。 走っている今でも呼吸が苦しくて頭がグワングワンして痛い。足も痙攣してきて視界は掠れてくる。 この体にガタがきているのは自分が一番知っている。 だからこそ最後までこのファミリーにつくしたいのだ。 名もない殺し屋として荒くれ回っていた私を拾ってくれた白蘭様の為に。例え私が利用されていたのだとしても… 倒れる、そう思ったらいつのまにか立ち入り禁止区域まで来ていた。ミルフィオーレのアジトには似付かない黒の間。恐怖はあったが自然と足は前へ前へとまるで暗闇に吸い込まれる様に歩いていた。 「…誰?」 「!」 まさか人が居ると思わなかった。ヌッと暗闇から出てきた人はゾ…ゾンビの様な人だった。あ、でも持ってるうさぎの縫いぐるみ可愛いかもしれません。 「あ、なたこそ誰ですかッ!」 警戒してみたが相手には戦意が見られず気を抜いた瞬間やっとの事で立っていた制でバランスを崩して倒れる…筈だったのだがゾンビの様な人が私を支えてくれた。 「…ありがとう」 「僕チンは白蘭様の命令で君を助けただけだ」 「!離しっ」 肩を支えて居る手を振り払おうとしたがもうそんな力残ってなかった。私もこれで終わりですね。 白蘭様の命令も背いたし…役立たずですし。 ゾンビに似た人はデイジーと言うらしいです。私はどうせ直ぐ死んでしまうから名前を教えられても意味ないんですけどね。 「名前…聞いてない」 「私の名前何か聞いても無駄ですよ」 「そうかもしれない。けど、なんで?」 この人はどうして知らなくてもいい事を態々聞くんでしょうか? 「私の命はもう長くはないんですよ」 教えれば黙りこんでしまった。私はデイジーに肩を借りて白蘭様が待っている部屋へと向かう。 どうせもう、逃げられないですしね。 「じゃあ、僕チンと君は逆だ」 「…意味解りません」 「僕チンは死ねないんだよ」 良く見たらこの人は傷後だらけじゃないか… それでもその言葉は今の私にとったら羨ましいとしか言いようがない。 「いいじゃないですか。貴方は生きたいと思う苦しさから無縁なんですから」 「死にたいと思う苦しさもあまりそれと変わらないと思うよ」 「デイジーはこれから白蘭様のお役に立てられる。これからもずっと。だけど私はもう不用品なんですよ。大切な人からそう思われるのがどれだけ辛い事か…」 デイジーは「あ」と声を出して立ち止まるので前を向くと大きな黒いドアの前まで来ていた。 此処に白蘭様が居るのか…この部屋で私は処分されてしまうんでしょうか?それとも捨てられるのか… どちらにしてもきっと泣く事になるんでしょうね。 ハンカチ持ってくればよかったです。 「僕チンは此処までだ」 「…ご迷惑おかけしました」 トントンとノックをした後にデイジーは私の体が倒れないように支えながら離れた。確かに死ねない事も辛いかもしれない。けれど、私は一度その体験をして見たいですよ。 ゆっくりとドアを開けて中に入ろうと一歩足を踏み出したら「君は死なない。だから名前教えてよ」と呼びとめられた。 気休めはいらない。皆死んで私を知っている人がいなくなってもデイジーだけは私を知っている。それも悪くないと思った。 「名前です」 私は上手く笑えていたかな。部屋に入ると黒い服も似合っている白蘭様が椅子に待っていましたと言わんばかりに座られていた。 いつか星になるその日まで (白蘭様は君を助ける) (だから死なない。) (じゃなきゃこの部屋に) (呼んだりしないだろう) 人間でなくなっても君は生きたいと思えるかい? |