誰もいない筈の放課後の教室で僕はある女子生徒の机の上に座り黒板を見ていた。
別にこの子が好きってわけではない。僕が気になっているのは前の席の名前だ。
あまり公になっていない噂だが「苗字名前は凄く残酷な人間」と言うものを耳にした。
噂に踊らされるわけではないが興味がわいた。
確かめようと本人に会ったがきょとんとしたアホ面の普通の女だ。
そんな噂が立つような人には見えない。だから噂が広まらないのか。
一気に興味が失せて話しかけるのを止めた。次の日、彼女のことを草壁に聞くと驚きながらも「人の事を考える優しい子ですよ。一度話した事がありますがいい人です」とまるで自分の愛娘を褒めるように語られた。咬み殺す気もうせたので「へぇ」って呆れ気味に答えると草壁は謝罪をしてから応接室を慌てて出ていった。
よく人を見てるね。だからこそ副委員長なんだよ君は。
ふっ、と思い浮かんだのは彼女の顔。なんであんな噂を立てられるんだ?そう言えば赤ん坊がやけに彼女をおもしろそうに見ていたな。裏社会の人間なのか…
一般人が広めた噂だ。彼女がそっちの人間だなんて知るはずもないだろう。
「委員長さんそこでなにしてるんですか?」
日も沈んできている時間に女子生徒が下校時間を過ぎているのに普通校舎にいるだろうか?僕は校舎内を見回りした時誰もいなかった。外にはまだ風紀委員が彷徨いているはずだし…
「君は一体何者なんだい?」
え?と小首を傾げて彼女が僕を見た瞬間ようやくあの噂の意味がわかった。
「誰にでも優しい演技は楽しいかい?」
そう言うと彼女はニコって笑い冷めた声で「めんどくさい」って言いながら近くの机に腰をおろした。
「みんな優しい女の子は好きでしょ?そうすればいろんな人に近づきやすくなるし目当てだった委員長さんに忍び寄れるかなあ?と最初は思ってたんだけど残念な事にアナタはそんな人間に一切興味がない人だったのよね」
「だから草壁に気に入られようとしたんだ」
「そうだよ。だけど、それも失敗。いっそのこと回りくどいやり方は止めて殺っちゃおうと思って」
「あの草食動物が狙いだったんじゃないの?」
「最初はカレだったんだけどあまりにも弱くて可哀想だからファミリーの中で強くて邪魔な委員長さんを最初に始末することにしたの」
「どうやらそれも上手くいかなかったみたいだね」
「リボーンが委員長さんに伝わるように変な噂を流してくれちゃったからね」
静かに立ち上がり彼女は僕に向けて銃を構えた。
「ほんとにリボーンがあたしの邪魔を沢山してくるから危うく任務が失敗になるとこだったわ」
「その任務は結局失敗になるけどね」
「どうかしら。あ、それとあたしは残酷な人間よ誰よりも性格が悪くてね」
「…僕にはそう見えないけどね」
だって君はこの平和な生活を手放すことが凄くいやなんだろう。
じゃなかったら泣いたりしないでしょ。
世界崩壊、5秒前
(僕が彼女を守ると約束するまで後4秒)
(あたしがフリーの暗殺者からボンゴレになるまで後2秒)
「僕のものになりなよ。そしたら君にこの日常をあげる」
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