「見ちゃったね」
そう言って彼女は私に銃口を向けた。
昨日まで愛し合って居たはずなのに名前は私に銃を向けたのだ。
名前の顔には殴られた跡があって足元には黒服を着た屍が3人倒れていた。
裏社会の人間だと知っていたけど私はあえてそれを彼女に言わなかった。
必死に事実を隠そうとする名前にそんな事言えなかったんです。
たまたま夜中に目が覚めて寝れなかったから散歩がてら街に行ったら名前が1人で路地裏に入っていくのが見えた。後をつけようか悩んだんですが銃声が聞こえたので心配になって名前を追いかけたらこの状況になりました。
「そんな顔しないでよっ」
…私は今どんな顔をしているんでしょうね。
たぶん笑ってるんだと思います。
名前が嘘をつく必要がなくなったのと私に銃口を向ける君が私を愛しているという事に嬉しいんだと思います。
泣きながら銃を構えるなんて名前らしくないですよ。
私は名前がどんな風に今まで銃を撃っていたか知ってるんです。
「ごめんね」
引き金を引く人差し指が震えている名前の隙をみて傍に近づいた。
驚く彼女を抱きしめて銃を奪い地面に投げ捨てる。
「私の方こそ謝らなきゃいけません。」
「な、んで風が?」
「全部知ってたんです…」
「!!そんなっ」
「すいません。私が早く言ってれば名前がこんなに苦しむ必要なかったのに…」
声を堪えて泣いてる彼女は私を責める事はしなかった。ただ、私の服を掴んで子供の様に泣いていた。
もしもやり直せるなら出会ったあの時に全てを打ち明けるのに…
「約束したでしょ?ずっと一緒にいようって」
君の過ちをどうにかできるほど私は凄い人間ではないけれど一緒にその罪を背負うことくらいできますから。
言って欲しかった
(言わないで欲しかった)
悪いのは全部私なのに
風が優しい顔をするから
この罪が許される気がして
甘えてしまうよ…
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