屋敷に帰ると疑う事を知らない瞳で俺を迎えてくれる名前。
俺はその眼に甘えていたんだ。
別に名前を嫌いだとか飽きたわけじゃない。
ちょっとした仕事でたまっていた憂さ晴らし程度のつもりだったんだ。
お前には弱い所を見せたくなかったし愚痴なんかいいたくなかったんだよ。
そうしているうちに俺は彼女を頼る様になっていつのまにか自分から必要とするようになってしまった。
駄目だと分かっているけど歯止めが利かない。
俺に恋人がいると知らないで抱かれる彼女。
俺を信じて帰りを待ち続ける名前。
いつの間にか2人を騙す事に慣れてしまっていた。
バレないならこのままでいいじゃないか。
俺だって逃げ場が欲しいんだ。罪悪感を感じながらもまた今日も俺は彼女と寝て家に帰る。
「私だけを愛して」
彼女が口にした言葉に驚いた。だが直ぐに首を横に振り「何となく言ってみただけ」と笑ったから冗談だよな…
アイツの大人な雰囲気が安心する。
いつもなら屋敷に戻ると名前が直ぐに階段を急いで下りてきて「おかえり」って抱きついてくるけどその出迎えはなかった。きっと遅くなったから寝ちまったんだろうな。
自室に戻ると異様に空気が冷たくて冷や汗が沸き出た。
「名前?寝てるのか?」
「…起きてるよ」
起きてるなら電気をつければいいのによ。
月の光を頼りにベットに座る名前の傍まで寄る。
薄暗いけどやっぱり名前は穢れをしらない無垢な瞳で俺を見た。
「どうして私だけを見てくれないの?」
「…は?」
何でこいつが知ってんだ?俺とアイツの関係を知る奴は誰もいない筈なのに…
「ねぇ、答えてよ」
俺を信じてきたその眼は裏切られた悲しみの涙を流して問いただす。
上手くいっていた筈なのにどうしてこうなった?
「ご、めんっ」
「謝られたって困るよ」
じゃあ、どうすればいい?名前の言う事を全部聞けばいいのか?お前が満足するまで俺は何をすればいい?どうしたら名前は許してくれる?
「ディーノは私に嘘ばっかりついてるよ。もう、何を信じればいいの?ずっとずっと騙され続けていた私が悪いの?ディーノが欲求不満なのに気づけなかった私の制なの?」
「違う!そうじゃないんだ名前は何も悪くない」
「ならあの女がいいの?胸がでかいから?大人っぽかったもんね。きっとリードしてくれて楽だったでしょうね!仕事、仕事ってあの女と寝るのが仕事だっていうの!?」
静かにしてくれよ。俺を嫌いにならないで。
名前を愛してんだ。だから離れようとすんなよ。
押し倒して無理やり口を口で塞いだ。嫌だ嫌だと嫌がる名前を押さえつけて愛の言葉を囁いて犯していく。泣きながら「死、んじゃえ」と掠れた声で必死に何度も言う姿さえ愛おしい
。
だからどちらも手放せないんだよな。
あんな女のどこがいいの?
気付けば酷い俺が居た
このままじゃ私はきっと可笑しくなっちゃう。
抱きしめられると同時に鋭い刃物をディーノに向けてつきさした。
ほんとに信じていたんだよディーノ。
「全部あなたの制なんだから」
電話で呼んだあの女が来たと同時に私は自分の喉にディーノを刺した刃物を突きたてた。
(彼女の血があたしの)
(頬に飛び散った。)
(あたしは一体何なの?)
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