あたたかい手
「さえか!!」
「お疲れ、亮」
かなり急いで走ってきたらしくて、少し息がきれている。
そんなに急がなくても大丈夫だったのに…。
「わりーな、遅くなって」
「全然大丈夫だよ」
夏にテニス部を引退した亮達…後は日吉君達に任せるって言ってたくせに、やっぱり心配みたいで、引退した今でもちょくちょく顔を出してる。
…日吉君も態度では迷惑がってたけど満更じゃないみたい。
「うおっ!!
お前顔真っ赤じゃねーか」
「へ?」
ふ、と優しく頬にふれた手がすごく温かく思えた。
亮の反応を見るとそれほどまでに冷えているみたい。
確かに去年より何日も早く初雪が降ったし、
最近は雨も多くて、気温は下がりっぱなしだ。
でもそんなのずっといれば慣れてくるものだし、亮と一緒に帰れるんだから全然苦じゃない。
「だから先に帰ってろって言ってんだろ」
「大丈夫よ、これくらい」
「…大丈夫じゃねーだろ」
頬にふれていた手が頭の後ろにまわって、ぐっと私を引き寄せた。
一瞬で亮の顔が近くなって、わけのわからない間に軽くだけど唇が重なった。
「なっ!!」
「ほら、こんなに冷えてんだろ…
我慢してんじゃねーよ」
首に巻かれている私のマフラーの上にもう一つ、亮のがふわりと重ねられた。
言葉は悪いけど、私にしてくれる一つ一つの行為が優しいのも、それが照れくさくてわざと言葉を悪くしてるのも全然知ってる。
「ありがと、亮」
「おう…ほら、帰んぜ」
さりげなく絡めてくれた手に、すごく安心した。
さりげなくぎゅっとアナタの手を握りかえした
「なんかあったけえのでも
食ってくか?」
「うん!!」
また一つ、アナタが大好きになりました。
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