[携帯モード] [URL送信]

短編
その声が、その唇が、その腕が

「…あ、あぁっ…ん、ひぁ…」

俺の口から嬌声が鳴る。

男が俺の体を貪る。揺れる俺の体。鳴き続ける俺の声。

気持ちいい。頭が真っ白になるほどに。

だけど、気持ち悪い。虚しい。疲れる。だるい。

「…っ」

男が俺の中で弾けた。トロリという感覚を体の中で感じた。

あぁ。

汚い。


────………


「───あの糞爺。三回も中出ししやがって。気持ち悪い。気色悪い。汚い。ムカつく」

「あんさー、カイル。いっつも、いきなり抱きついてくんのやめてくんね?つーかもう少しで苺オレ溢れるところだったんだけど」

呆れたように言うシェリルを無視し、シェリルの肩に顔を埋めた。仄かに香るシトラスが眠りを誘う。

俺は目を閉じた。シェリルの腰に回す腕に更に力を込めた。

「疲れた。何もかも。面倒くさい。……死にたい」

「馬ー鹿」

シェリルがため息を吐いたのを感じた。

シェリルは持っていたグラスを側にあるテーブルに置くと、包み込むように俺を抱きしめた。

シェリルは俺の頭に頬を寄せた。そして髪を撫でると、俺の耳にその秀麗な口を寄せた。

「お前が死んだら、こうやって喋れないし、お前をこうやって抱きしめられない。キスも出来ないし、お前の体温を感じられない。何もカイルを感じられないよ」

「……、…」

思わず唇を噛んだ。

その言い方、ずるい。

「カイルが死んだら、あたしも死ぬよ」

「やだ」

「だったら死ぬな」

「……シェリル」

「ん?」

俺はシェリルの首に腕を回した。はたから見たら今の俺は、まるで母親に甘える子供みたいだろうな。

「俺を抱きしめて、俺にキスして、俺を安心させて、俺を、…癒して」

シェリルがクスッと笑った。

「ガキみてー」

そう言ってシェリルと俺は、シーツの海へと身を堕とした。

その夜、俺は久しぶりに安心して寝ることが出来た。



その声が、その唇が、その腕が

(俺を救ってくれるんだ)




.

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!