頂き物小説
いぬ。A
「奈希(なき)ちゃん! 一緒に帰ろう!」

 こいつは、あたしの前にいきなりあらわれた。
 そして突然告げてきた。

『あ、あの!ボク、ヒロトっていーます!おともだちになってくださいっ』
『………いいよ』

 別に告白されたわけでもないから、あっさり頷いたのだけど……。

「奈希ちゃん!奈希ちゃん!ほら!ヒコウキが飛んでるよー!」

 事あるごとに、あたしの名前を呼ぶ。

「奈希ちゃん!奈希ちゃん!」

 あぁ、ほらまた些細なことであたしを呼ぶの。

「おはなぁー!」

 花を見つけたぐらいで…。

「なーきーちゃーんVv」

 嗚呼、うるさい。

「あんた、家どこよ」

 あたしから話し掛ければ、こいつがあたしの名を呼ぶことはないだろう。

「んー?あの道かなぁ?」

 指さしたのは、見覚えのある道。嫌な思い出。

「……」

「奈希ちゃん?」

 あたしは、早くここを通り過ぎたくて、こいつに言った。

「早く、帰ってよ」

 胸がひどく痛んだ。なんで? 泣きたくなる。
 ヒロトは、とても悲しそうな顔をした。

「ごめんね?迷惑だった?」

 あたしは咄嗟に顔を上げ、首を振る。

「そっか!」

 にかり、と嬉しそうに笑った彼は、よしよしと、あたしの頭を撫でた。

「?」

「コトバって、むずかしいね?」

 難しい。
 簡単なようで、とても。

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