A Short Story.
歪んだ宴
「例えば、世界が私達人間のように意思や感情があったら私達人間を見て呆れちゃうと思うの。」
突然、そう言った彼女に俺は疑問の声をあげた。
「どうして?」
「だって汚いもん」
俺はよく分からなくてもう一度聞いた。
「何が?」
「人が」
やっぱりその答えだけじゃ俺には理解出来なかった。それから黙り込んだ俺に気付いた彼女は話を続けた。
「ほら、人間って汚くて醜いと思わない?ちょっとした事ですぐに他人のせいにしたり自分のイライラを他人にぶつけて自分だけ助かろうとする。それで人を傷つけて相手に悲しい思いをさせる。」
「………」
「人ってやっぱり汚くて醜いよ。人を傷つけなきゃ生きていけないなんて」
「………」
「………」
「…俺は」
「………」
「俺はそうは思わない」
俺がそう言った瞬間、彼女は初めて俺の方を向いた。俺は彼女の方を見ないで話を続けた。
「そういうのがあるから人ってイイんじゃないの?」
「………」
彼女はよく分からないというような顔をしていた。
「そういうのがないと人ってつまらないと思わない?薄っぺらくなっちゃうと思うんだ、“人間”という存在が」
「……分からない」
「人を傷つける事がなかったらそれだけなんだ。傷つけて傷つけられてそれで苦しんだり悲しんだりして人は成長していく。じゃなきゃ今の俺もお前もいない」
「でも」
「お前の言いたい事も分かる。確かに人は汚いし醜いかもしれない。でもそれが人間だろ?汚い、醜いって思ったところで何かが変わるわけじゃないんだし。それが人間だって思えば」
「……やっぱり分かんない」
「いいんじゃない?それも“人間”なんだから」

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あきゅろす。
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