NandS
其の4
やる事もなく、なんとなく本を読んでいる公太。ただ、彼が読んでいる本はただの本ではない。
洋書だ。
公太の目には英語しか映っていない。一頁、また一頁と本を進める。
その時。

ヴーヴー

携帯のバイブが机を叩いた。
公太は読みかけの本にしおりを挟むと携帯を手に取った。
携帯の画面には“誠一”の文字が。
「どしたのー?誠ちゃんから電話なんて珍しいねー」
『だからその呼び方辞めろっつの』
受話器の向こうから疲れたような、かったるそうな誠一の声が聞こえた。
「なんか疲れてそうだね」
『当たり前だろ〜!ったく七海のヤツ…』
七海の事を口にするとブツブツと呪文を唱えるようにボヤきだした。
「(誠一の不幸指数…10かな?)」
『おい。お前今また俺の不幸指数とか考えてなかったか?』
「やだなー!考えるワケないでしょ!!」
『嘘だな。ったくお前はなぁー!』
「わーっ!わーっ!誠一オレになんか用があんじゃないの?」
『あぁ?あーそうだった。あのさー』
そうして今まであった事を話し始めた。
「パスワードねぇ…」
『なんか思いつかねぇか?』
「ん〜…“公ちゃん愛してる”とか、どう?」
『…何、お前。そーゆーシュミだったの?』
「冗談だよ冗談!マジにとんないでよー!」
などと冗談を交えながら話していると
「お兄ちゃん」
と可愛らしい声が聞こえた。
突然の事に少々驚きつつもそこにいるであろう女の子の方を見る。
「どうした?亜須香」
『妹?』
「うん。ちょっとまってて」
『ああ』
一旦電話を止めると妹の亜須香に声を掛けた。
「んで?何?」
「うん。誠一さんから電話が来たんじゃないかなって思って」
「ビンゴ」
少し嬉しそうに言うと亜須香にも少し待つように言って電話に戻った。
「というわけなんで、パスワードわかったら連絡するよ」
『何が“というわけなんで”だ。訳わかんねぇよ』
「まぁまぁ、それじゃバイバーイ!」
『えっおい、ちょっ』
ブツ
プープープー
「それじゃ考えようか、亜須香」
「うん!」
公太は読みかけの本を手に取ると亜須香と共に部屋を出た。

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あきゅろす。
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