NandS
其の2
「誠一が色々頑張ってくれてる間にあたしの方もやっちゃおうかな」
そう言うとパソコンに向かった。
カチャカチャ
   カチャカチャ
七海しかいない部屋に無機質な音が響く。
カチャカチャ
   カチャカチャ
「なかなか手が混んでるわね〜。でも、この七海様にかかればお茶の子さいさいよぉ!!」
何に手が混んでるかというと、七海達が依頼を受けた時に預かったディスクのプロテクトの事だ。七海はそれを解こうとキーボードに指を走らせていた。
それはもう常人には見えない速さで。
「もう少しで…よしっ!出来た!」
七海がプロテクトを解く為に費やした時間は約一時間半。七海にしては大分時間が掛かった。というよりかかり過ぎた。普段だったら三十分掛かるかどうかだ。
「疲れた〜」
と溜め息と共に言葉を吐き出すと今度は逆にすぅっと息を吸った。
「誠一!!」
ドタドタと走ってくる足音が聞こえる。
「なんだよっ、こっちは掃除で忙しいんだよっ!」
「肩たたきして」
「はぁ?!」
「か・た・た・た・き」
「わぁったよ!たたけばいいんだろっ!たたけば!」
誠一は七海の肩に拳を置くとポンポンとたたき始めた。
「大体、なんで何もやってない七海の肩がこるんだよ。普通こるのは俺だろ?!」
「誠一、あたしの前をよく見てみなさい」
「あぁ??」
誠一は七海の前を見た。
「これって…おい。見るなって言われなかったか?」
「言われたけど…見るなって言われたものを見たくなる。これが人でしょ?」
「…………………」
「にしても、凄いプロテクト掛かってたんだよねー。しがも最後の最後にコレ」
七海はパソコンの画面を指差した。
誠一は七海の指の方を見た。

『パスワードを入力してください』

「パスワードって何よ」
「知らねぇよ」
「……………………」
「っわぁっ、ってぇなぁ!!」
誠一が何をされたかというと七海に頭をグリグリされたのである。
「考えて」
「なんで俺がそんな事───」
「誠ちゃん」
にっこり
「ワカリマシタ」
「よろしい」
「(よろしいって、おまえ何様だよ…。あぁ七海様か……)」

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あきゅろす。
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