短冊集
○サンタ狩り
みんなは知っているかな? どうやってクリスマスの日の朝、プレゼントが枕元に置かれているか。
なになに? サンタさんが届けてくれているだって? 残念ながらそれはちょっと夢を見すぎだね。
なになに? お父さんやお母さんがお店で買ってきてくれているだって? 残念ながらそれはちょっと現実を見すぎだね。
じゃあ何が答えかって? それはね……
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「ほっほっほっ。今年こそ、守りは完璧。貴様らの物量作戦なんぞに負けはせんぞ」
きらびやかな舗装がされた、大人のためのお城のような建物のバルコニーで、白いヒゲを生やし、深紅の装いを纏ったメタボな中年が笑っている。
深紅のおっさん見下ろした先に、これまたおっさんが立っている。そちらは後ろに多くの男女を従えている。(以降、先頭に立っているおっさんは、省略してトウさんと表記します)
「ぬかせ! また今年も貴様の財をむしり取ってくれるわー!」
──わぁぁぁ……
トウさんが咆哮を上げると、後ろの群衆も合わせて歓声をあげた。
「皆のもの……行くぞー!」
──わぁぁぁ……
トウさんは右手を上げてお城に向かって駆け出した。群衆もトウさんを追い掛け、お城の中へと流れ込んでいった。
「ほっほっほっ。今年のもクリスマスイブも楽しめそうじゃのぉ」
深紅のおっさんはヒゲをもみもみしながら、眼下に広がる光景に目を細めながら呟いた。そしてもみもみしながら踵を返し、モニターなど複数の機器が備えられた室内へと入っていった。
それから幾ばくかの間、様々な箇所から発せられた破裂音や叫び声が城内を響いていた。
──ガガッ……こちら父隊D班班長。2階フロア第3ブロックの制圧完了です。しかし最後に不意をつかれ、負傷者が多数でてしまいました。
「了解。こちらの心配はしなくて大丈夫だ。負傷者の手当てに専念してくれ」
トウさんがトランシーバーに向かってしゃべっている。お城の前では数えきれないほどいた群衆だったが、今はその数を多く減らしてしまった。
「……父隊G班班長」
地図を確かめながらおっさんはトランシーバーに向かって再度話し掛けた。
──ガガッ……はい。こちらG班班長です。
「班員を少し第3ブロックに向かわせて、D班の救護を手伝うことは可能か?」
──ガガッ……問題ありません。ただちに向かわせます。
「よし。これでこの場にいない者への憂いはなくなった。あとはサンタを倒して子ども達へのプレゼントを手にするだけだ。
ターゲットはすぐそこにいる! 皆、気を抜くんじゃないぞ!」
──おぉぉぉ……
さきほどより確実に人数は少ないが、迫力のある叫び声が響いた。
「突撃ぃぃぃぃ」
──わぁぁぁ……
全員が目の前にある扉に向かって走りだした。引き戸を押し開けて突入した部屋内では、深紅のおっさんが座り心地のよさそうな椅子の上でモニターを見つめていたが、トウさん達の方に向き直り立ち上がった。
「ほっほっほっ。ここまで辿り着いてしまったか。だがさすがに今年は数が少ないのぉ。それじゃ今年はプレゼントのないクリスマスを過ごすことになるぞ?」
深紅のおっさんはご自慢のヒゲをもみもみしながら挑発した。
「なんだと!? 貴様なんかこの人数で十分だ! そうだろう?」
トウさんが後ろを振り向くと、後ろに従えられた男女はそれぞれの得物を持ち直した。
「ほっほっほぉ……。サンタをなめるなー!」
──わぁぁぁ……
今年の意地と意地とのぶつかり合い、最終戦が始まった。
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どうだい? これがクリスマスの真実だよ? これでちょっとはプレゼントに対する有り難みが増したかな?
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