短冊集
▽達人域
今日が昨日になり、明日が今日になって数時間がたった。すでに意識は眠りに落ちていると思っていた。
プ――ン
耳元で奏でられる音に誘われ、目を開いた。暗闇の中、相手の姿は確認できず、電気をつけるのも鬱陶しいため、覚醒しきっていない状態で、ただ勘だけで手を叩いた。大きく乾いた音が鳴り響かせた。
ヤれてなどいない。分かってはいたが、音が止んだためそのまま元の眠りに戻ろうとした。
しかしすぐさま――
プ――ン
まどろむことはできず、徐々に意識が覚醒してきた。また電気をつけずに勘で拍手をする、音がやんだ。今度はそのまま眠りにつこうとせずに、衝撃波で墜落してないか、と能力者気分で電気をつけた。
目が悪い上に明るさにに慣れていない状態とはいえ、目的のものが周りに落ちている様子は微塵もない。しかしふと手元を見ると、左の掌にはべっとりと黒い物体がへばりついていた。一回目の拍手のあと、深い意味はないが顔を掌でこすったので、今回も同じことをしていたらと冷や汗をかいた。
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