短冊集
☆料理の意味(カレカノ)
二人は幼なじみ。小さなときからよく一緒にいる。
彼はあまり社交的ではないことから、みんなから堅物だと言われている。彼女はそんな彼を振り回すことから、みんなから女王様だと言われている。
今日は二人で料理教室。教室と言っても、彼女が彼の家に押し掛けて一緒に料理を作っているだけである。
彼は料理が得意で、どこに出しても申し分ないほどの腕前だ。彼女は決してお世辞にも上手いとは言えない。
「いちいちオレのところに来て、練習しなくてもいいじゃないか」
愚痴っぽく言っているが、彼には拒否する素振りが全く見えない。
「なによりお前の母さんの方が、料理の腕前は上だろ? なんたってシェフじゃないか」
彼の指示に従って動いていた彼女は手を止めた。
「そうだよ。でもそれは世間に対して出すものであって……」
再び包丁を動かし始めた。
「料理はやっぱり、好きな人好みの味で作れてこそ、意味があるんだよ」
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