短冊集 ◇パニックルーム 男はある人物が中にいる部屋の外でイライラしていた。 ドンドンドン── ガチャガチャガチャ── 男は部屋の扉がまるで叫んでいるかのような音を出させる。 「おいコラ! さっさと出てこいや!」 そして、部屋の中にいる人物に向かってドスの効いた声で叫ぶ。 「一体どれだけ待たせる気だテメエ、あぁ?」 男の興奮は自分の目を血走らせるほどで、苛立ちのためかほのかに発汗している。 ドンドンドン── ガチャガチャガチャ── 「さっさと出すもん出しゃいいだろ? そうすりゃこっちだって文句を言わなくて済むんだからよ」 ドンドンドン── ガチャガチャガチャ── 「いるのは分かってんだ。居留守なんか通用しねえに決まってんだろ!」 ドンドンドン── ガチャガチャガチャ── 「分かってんのか? こっちにだって我慢の限界ってもんがあんだぞ、ボケ!」 ドンドンドン── ドンドンドン── 男が扉を叩く力にも凄みが増してきた。周りから見ても限界が近いのは丸分かりだ。 「クソが! そろそろやっちまうぞ、コラ!」 カラカラカラカラ── 「あぁ?」 ジャー── ──ガチャ 「すいませんね、どうぞお待たせしました」 「な、なげーんだよ。出ちまうだろうが」 バタン、カチャッ 男は用をたして出てきた男性を一瞥し、危うい腹部を解放するために部屋に駆け込んだ。 [次へ] [戻る] |