Drr×01 奇之予兆
「偽善者は救われない。」
なんて,誰が言い出したんだろうね。
そう,あの頃だ。
真っ赤に燃え盛る炎に向かって飛び込んでいったヤツが居てね…。
周りが止めたのにも関わらず,バカなそいつは真っ直ぐに,躊躇無くその炎に飛び込んだんだよ。
普通なら,少しくらいは躊躇するだろ?
自分の身が危ないわけだし。
人間,一番自分が可愛いものさ。
気に病む事は無いよ,それが人間。
むしろ,自分は人の為なら死ねる!って公言してるヤツほど信用出来ないと思うね,俺は。
そういう人間に限って影では自分が一番可愛いと思ってるのが大半だ。
…………あ,いや。そうやって公言してるヤツが全員,そう思ってるとは言ってないよ?
大半だ,って言ったんだ。
中には本気でそう思ってるヤツもいるさ。
………極少人数だろうけどね。
考えてもみなよ,実際にそういうヤツらがほとんどだったら誘拐事件とか殺人事件なんて起こる筈が無いだろう?
……話を戻すけど……その炎に飛び込んだそいつは少人数の中の一人で,なんと,無事に生還したんだ。
もちろん,水も被らずに炎の中に入ったから無傷とは到底言えなかったけどね。
その時,そいつは一人の少女を抱えていた。
まぁ,その子も無事に生還したのはしたんだけど…。
その少女は病院で手当てを受けて入院していたんだけど,不思議な事にいつの間にか姿を消してしまったんだ。
その少女がどこに行ったか分かるかい?
その少女を助けた彼の元さ。
そして少女が姿を消した翌日,彼は自宅近くで息絶えているのが見つかった。
その彼に助けられた少女も一緒にね。
もちろん,少女も息絶えた姿で。
………え?何故そんな事になったかだって?
…簡単な事さ。
その助けた彼は偽善者だったんだ。
意味がわからないって?
そんな睨まないでくれよ。
実のところ,俺も良くわかっていないんだ。
じゃあ何で彼が偽善者だって言えるのかって顔だね。
いいよいいよ,その反応は当たり前だ。
………そうだね,この話を始めるには重要なキーパーソンを知っていなきゃダメなんだけど……。
君は,闇鴉を知っているかい?
“ダークバード”と呼ばれる者の事なんだけど……───。
君は知っているかい?
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