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01 出


朝からどんよりと曇っていた空は、昼過ぎから泣き始めた。

薄暗い道。
空を覆う黒い雲。
太陽も厚い雲に隠れてしまい、今がまだ夕刻だというのも忘れてしまう。

そんな日の帰り道。











しきりに降り注ぐ雨粒を避けるように、僕は教会へと続く道を足早に進む。



午後の授業が始まった頃から降り出した雨は、ざあざあと大きな音をたてて降り続ける。
その音はあまりに大きく、僕の集中力を少しずつ削いでいく。


なんとなく学校から帰りたくて。
けれど、なぜか真っ直ぐ家に帰りたくなくて。


他に寄る所も思いつかなかったから、時々顔をだす教会に足を向けた。



重くて大きな扉に手をかけ、力をこめて押す。
ギィ、という音と共に小さく開いた扉の隙間に雨から逃げるように体を滑り込ませる。


小さくなる雨音。


建物の中に入ったためか、それとも教会のもつ神聖な空気がそうさせるのか。

どちらにせよ、煩わしく思っていた音が聴こえないのなら、僕にとっては念願叶ったり、だ。
そうぼんやりと考えた。


ふぅ、と一息つく。
と、同時に耳に入ってくる音があった。



「ピアノ……」



雨音に気を取られて気づくのが遅れた。
どうやら先客がいたみたいだ。

前方に置かれたピアノから、柔らかな音色が奏でられている。


ショパンのエチュード、Op.10-3。


もともと標題はなかったが、映画で使われたことによって「別れの曲」と称されるようになった、ショパンの代表作の一つ。


ピアノの音はとても叙情的で、旋律は歌うように流れ続けている。
その音色に引き寄せられるかのように、僕はピアノへと近づいていった。





いつの間にか、雨音は聴こえなくなっていた。




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あきゅろす。
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