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二次創作/夢
熱の監獄(修成り代わり愛され忍田落ち/ナナ様)






「ようメガネちゃん!今日もいい感じにくびれてるな!!」


「(ひいい腰撫で回さないであああああ)迅さんやめてくださいぃ…っ」






「ふむ…中々いい柔らかさだ」


「(なっ流れるように膝枕の体勢にいいい眼力半端なく強くていらっしゃる風間さんんん)…よ、かったです……」






「…三雲か。何してるんだこんな遅くまで、お前に一応女だという自覚は無いのか?」


「(うわあああ三輪先輩にめっちゃ頭撫で回されてるうう一応女ですみませんん)く、訓練を…」






「あら、朔ちゃんじゃない。最近どう?」


「(おっふ加古さんに胸をおおお鷲掴みにいいいい)まずまずでふ、っひい」






















「…ふむ」


「わあ…」



近頃元気ない!と遊真と千佳に詰め寄られた朔は、玉狛支部のラウンジにて今まで受けたセクハラ行為の数々を打ち明けていた。以上です、と彼女がそう締めくくると、話を神妙そうな顔で聞いていた二人は思い思いの声を上げる。てっきり訓練内容等で悩んでいるのだとばかり思っていたのに、まさか様々な人からのセクハラが原因だったとは。げっそりとした様子の彼女を見て、彼等はとりあえず同じ玉狛支部の迅に制裁を加えようと決意した。



「迅さんはまあ置いといて…被害に遭うのは決まって本部に一人で居る時なんだな?」


「そうだね、一体何をしたいのか理解に苦しむんだけど…」


「迅さんは置いといて…本部に居る時は朔ちゃんを一人にしないようにしたらいいのかなあ」


「(何故そんなに迅さんを気にするんだ…)う、ーん…でも私に誰かつきあってもらうのも悪いような……」


「そんな事無いぞ朔!」


「そうだよ朔ちゃん!」



本部に訓練しに行くことが最近では多いから申し訳ない、と暗に一人でいいと漏らした朔は、二人の力強い言葉に驚く。何をそんなに語気を強める事があるのかと目を丸めていれば、彼等はそんな彼女に言い聞かせるような声音で切々と言った。



「いいか朔、お前は俺達のリーダーなんだ。いざという時にすとれすとやらで碌に戦えないなんてなったらどうするつもりだ?」


「うっ…そ、それは……」


「そうだよ朔ちゃん、これは朔ちゃん一人の問題じゃないんだよ!」


「千佳まで…」



困ったな、と眉を下げて頬を掻いた朔は、その表情とは裏腹に少々照れくさそうな声を上げた。普段世話を焼く分、こうも心配されるとむず痒い物があるのだろう。真剣な二人分の瞳に見つめられて、彼女は分かったよと返した。それに彼らも満足そうにそれでよし!といった顔をする。

とその時、三人の背後の扉が勢いよくバタンッと音を立てて開いた。そこには仁王立ちをした小南がおり、その後ろには烏丸と木崎の二人も顔をのぞかせている。



「話は聞いたわよ!!あたしたちも協力するわ!!!」


「水臭いぞ朔、師匠に何の相談もないなんて」


「中々厄介そうだし、俺に出来ることなら協力しよう。その中に同級もいるみたいだからな」


「先輩…!!」



突如乱入してきた面々ではあったが、皆が皆実力者揃いという頼りになる人達である。感極まったような声を上げた朔は、御願いしますと深々と頭を下げる。

―かくして、セクハラ総討隊(皆玉狛支部所属)は結成されたのであった。
































(かといってこれは…)


早速訓練をするために本部へ足を運んだ朔は、周囲から注がれる視線の多さに顔を俯かせた。それもそのはず、彼女の横と後ろは先輩三人に、前は遊真と千佳の二人によって囲まれていたのだから。これならどの方面からきても大丈夫よ!!と小南が言った通り、確かに問題のセクハラ行為を働かれる事は無いだろうが、注目を浴びる点は考慮していなかったようである。おいあいつ何で囲まれてんだ…という疑問や好奇心に満ちた視線が肌に刺さるようで、朔は非常に居心地の悪い思いをしているのだった。



「ところで朔、今日は誰かに訓練をつけてもらうと言っていなかったか?」


「うん、そうなんだけど…なんか隊室に来いって言われてるから皆ついてこなくても」


「ストーップ!総員集合!!」


「エッ何事」



腕を頭の後ろで組みながら悠々と歩いていた遊真が不意に振り向いて質問をすると、朔は軽く頷きながら待ち合わせ場所を告げる。すると、彼女が皆が居ると迷惑になるかもと言い切る前に、小南の号令が彼女の言葉を遮った。
号令が掛かると同時にバッと小南の元へ集まった四人は、円状になって会議を開き始める。彼らの元を離れると被害に遭うことが分かっていた朔は離れる訳にもいかず、えっ、えっと漏らしながら彼らの周りをぐるぐると回った。肩を組んでいる彼らの会話は、あまりに小さな声で交わされていて何も聞き取ることができない。木崎と烏丸に挟まれて肩を組んでいる千佳の足が地面から浮いている事にも気付かず、ただただ彼女は狼狽えた様子で円の周りをさまようのだった。


(ちょっと遊真どういうこと!?あれじゃあ密室でパクリと行かれちゃうじゃない!!)

(ふむ、これは予想外だった。てっきり最近仲のいいキトラだと思ってたんだが)

(朔ちゃんをこのまま行かせるわけにはいかないです…!!)

(待て、落ち着けお前ら。まずは敵を知ることからだ)

(そうっスね、じゃあここは俺が)


そう言った烏丸が顔を上げると、うろうろしていた朔と目が合う。不安そうな顔の弟子を見据えながら、烏丸はゆっくりと言葉を区切りながら話し始めた。



「いいか朔、怒らないからちゃんと言いなさい」


「えっ」


「言いなさい」


「え…はい…?」


「お前の、訓練に付き合ってくれる、相手は、誰だ」


「同じシューターの、に、二宮さんです…」



いつになく真剣な表情に気圧された朔がどもりながら答えると、暫く間を置いてから烏丸は再び顔を伏せて円の中へ戻る。そんな師匠の行動にまた一人仲間外れにされた…と彼女が地味にショックを受けている横で、再び会議は再開されるのだった。


(おい、朔は一体いつあの似非プリンス(笑)を引っかけてきたんだ)

(よりにもよって…あいつは厄介だな)

(二宮ァ!?あんなのに渡さないわよ!!!私は嫌よあんなニコリともしない奴!!!!)

(ふむ…ニノミヤ、とやらは)

(確かシューター一位の人だよ…朔ちゃん言ってたよ)

(…とりあえず、今日は何としても二宮に朔を会わせない方向で行くわよ!!レイジさん連絡先は!?)

(持ってるぞ。朔は諸事情で今後一切お前の隊室には訪れない、と…これで良いか)

(流石ですレイジさん)


木崎がその文面を相手に送り終えた所で、やっと円形はばらける。一人手持ち無沙汰になっていた朔は、お話は終わりましたか…?と彼等に尋ねた。それに肯定の意を返した木崎は、スマホを片手にそのまま話を続ける。彼曰く、今日訓練をつけてくれる予定だった二宮が急に都合が悪くなったというのだ。



「体調でも悪いんでしょうか…?」


「いや、そうではないらしい。
朔、今日はこれ以外に何か本部に用事はあるか」


「いえ、特にないです」


「そうか、じゃあ今日のところは俺達で我慢してくれ」


「えっ?」


「訓練なら玉狛でも十分できるだろう」


「い、良いんですか!御願いします…!!」



さあ帰るわよ!と言った小南を先頭に、彼等はぞろぞろと来た道を引き返していく。結局この日は先輩達にたっぷりと彼女は鍛えてもらうのだが、先程木崎が送りつけた文面を見た二宮が盛大に舌打ちをした事を朔が知る由はない。
































そんなこんなで、朔が本部に行く際には玉狛(迅除く)の誰かを最低二人は連れて行く日々が続いていた。

しかし彼等にもそれぞれの都合があり、毎回ついていく訳にはいかない。そういう時は支部の方で訓練をするようにきつく言い含められているのだが、やはり本部の様々な機能の付いた訓練室が恋しい。一週間ほど本部に行けない日が続くと、朔は自然とそう思うようになった。


(最近はセクハラもされなくなってきたし…今日ぐらいは大丈夫だよね)


思い立ったら即行動、という程ではなくとも、彼女は中々どうして行動力のある人物である。準備を整え、支部のラウンジに人が居ない事を確認してから、朔は静かに扉を開けて本部へと向かうのだった。
朔が書き置き一つ残して姿を消した事に気が付いた彼らが、その行き先が本部だと知って大捜索を始めるのは後の話である。




さて、本部に到着して早速訓練室に向かおうと足を踏み入れた朔だが…彼女はその時点でもう既に後悔していた。早速セクハラ犯に絡まれていたのである。まさか本部に入った瞬間セクハラされるとは思っていなかった朔は、最早涙目だった。



「ハァーこの抱き心地…この腰のくびれ…良いわあ」


「(ひぃいいいいい首に髭がじょりじょり当たってるうううう怖いよおおおお)やめてくださいーっ太刀川さん離してー!!!!!」


「あ゛ーレポート明けに沁みる…」



敬語を忘れるくらい混乱の境地に陥っている彼女は、必死に自身の腹の前で組まれた腕を外そうとするが全く力がゆるむ気配はない。数分抵抗を続けて力尽きた朔は、後ろから抱えられる形でそのまま太刀川に連れ去られるのであった。

その間、周りからあり得ない物を見る目で凝視されたのは言うまでもない。

































セクハラ総討隊による総力を上げての捜索が繰り広げられる中、朔は未だ太刀川という男に拘束されたまま食堂にいた。手を離せば即座に逃げ出すと分かっていたのか、彼は少女を後ろから抱え込む状態で椅子に座っている。つまりは自身の膝の上に朔を乗せて餅を食べているのだった。



「いやー餅に可愛い女子に最高だな!!」


「(もうやだ怖い…なんで抱えられてるの私……謎……)」



しくしくと泣きながら体を縮めている少女と、その少女を膝に餅を御機嫌に食事する顎髭男の姿は、人の多い食堂内で非常に目立っていた。どう見ても少女が無理矢理付き合わされているようにしか見えないが、直接声をかけようとする勇者は居ない。何故なら、のんきに鼻歌を歌いながら餅を伸ばしている彼はA級一位部隊の隊長なのだ。誰もそんな勇気は持ち合わせていなかった。

ギャラリーが何も見なかった事にして顔を背けていると、ふとその一部が通路から聞こえる音に気が付いた。まるで何かが猛スピードでこちらに向かってきているような…。

そう思ったその瞬間、時の人である太刀川慶の頭が食堂のテーブルに凄まじい音を立てて埋まった。えっ、と誰かが声を漏らしたそれは静まり返った食堂によく響く。そこには、ノーマルトリガー最強の男と名高い本部長…忍田真史が朔を抱えて立っていたのだった。



「…ああ、すまない。君達は気にせず食事を続けてくれ。あと机の弁償代はこの馬鹿の懐から引いておくから安心してほしい」



それでは失礼する、と片腕で少女を抱えたまま去っていった彼の後ろ姿を眺めていたギャラリーは、その背広が見えなくなったところで止めていた息を吐き出す。依然として静かな食堂内に、一つ二つと呟きが落ちた。



「…いや、あまりにも可哀想だったからさ、沢村さんに連絡はしたよ?俺」


「見たかよ、あれで生身なんだぜ…」


「テーブルとかこれ鉄じゃねえの…?すげえめり込んでない……?」


「あれが最強の男…か」



ちなみに、この呟きの中には太刀川を心配する声は一つとして無かった。言うまでもなく自業自得である。その暫く後、彼の身柄はセクハラ総討隊によって回収されていったらしい。


































「すまないな、来るのが遅れて」


「いえ、あのっ本当にありがとうございました…!」



本部長の執務室近くまで来て、忍田はやっと口を開いた。その表情はやけに真剣で、朔は緊張しながらなんとかお礼を言う。しどろもどろになっていても礼儀正しいその姿勢に感心したのか、忍田は目を細めて軽く微笑んだ。



「弟子にはよく言い聞かせておこう。折角レポートを全部終わらせたから何か褒美でもと思っていたんだが…この分だと無しだな」


「レポートですか…大学生の皆さんはすごいですね、そんなに沢山の課題を抱えながらボーダーで活動されてるなんて」



未だ涙の跡が残る頬を軽く拭いながら朔がそう言うと、忍田は軽く目を見開いてから可笑しそうに吹き出す。その様子を見て彼女が何かまずいことを言ったのだろうかと狼狽えていると、彼はくつくつと喉を鳴らしてさらに笑った。



「ああ違う違う…大学生が大変なのではなくて、慶がレポートを大量に溜めるから悪いだけの話なんだ。皆が皆そう幾つものレポートを同時期にやる訳ではないんだ」


「そうなんですか?…でも、ご褒美も無いんじゃあ次はどうするんでしょう」


「そうだなあ…」



いい加減自分で歩けると腕を叩いてアピールしてみても素知らぬふりをされた朔は、不満そうな顔をしながらそう告げる。すると途端に思案顔になった忍田は、暫く沈黙してからゆっくりと顔を上げた。抱え上げられているせいで忍田よりも上の位置に己の顔があるとはいえ、いかんせん二人の距離が近い。ドキリと跳ねた心臓の感覚に震えながら、朔は彼の言葉を待った。



「慶に褒美はあるのに、私に無いのはおかしいと思わないか?」


「え、本部長にご褒美ですか…?すみません私持ち合わせが無くて…」


「別に金のかかるものじゃなくていい。三雲くんからというのが大事なんだ」


「えっと……」



そうは言われても難しい事を持ち掛けられたものである。褒美…褒美…と頭を捻っていると、ふと視界に映る忍田の頭へと意識が向いた。



「!」


「…その、お仕事とか色々あると思いますが…今までお疲れ様です。これからも頑張ってくだふぁい!」



自分より年上の人の頭を軽々しく撫でて良いものかと思ったのだが、朔にはこれ以外のご褒美が思い付かない。やるぞ…!と意気込んでその意外に柔らかい髪の毛に手を這わせながら労りの言葉を掛ける。最後に緊張のあまり噛んでしまったが、言い切ったという達成感に彼女は満足そうな顔をした。
だが、肝心の忍田からは何の反応もない。今更ながら不安になった朔は、恐る恐る声をかける。その表情は打って変わって暗いものだった。



「あ、駄目でしたか……?」


「…ふ、っ」


「え」


「くっ、ふふっ」


「わ、笑ってます!?笑ってますね本部長!!」



こっちは真剣に悩んでたのに、と憤慨する朔を見た忍田は更に笑い、肩を震わせる。そのまま少女を下ろした彼は、目尻に浮かんだ涙を拭いながら彼女の頭を撫でた。



「ははっ、可愛いな三雲くん」


「?
………!?ほ、本部長!!!」


「いや、…私はもっと別の褒美を期待してたんだがな」


「別の…?」



やっと笑いを収めた彼は、優しい手つきで朔の頭を撫で続ける。爆笑された事にむくれていた彼女は、その大きな手のひらから伝わる温かさに身を任せながら聞き返した。すると、髪を梳いていた手が離れて肩に置かれる。撫でてくれないのか、と不服そうな顔をした朔に再度笑った忍田は、打って変わって真剣な表情になった。しかし、その瞳だけは確かな熱っぽさを含んでいる。

―不意に視線を上げた朔は、その眼差しに再び心臓が跳ねたのを感じた。



「…知りたいなら、教えようか」



する、と頬を撫でる指先は瞳と同じ様に熱を孕んでいる。その熱に迫られてかわす事が出来る程、彼女は大人ではないのだ。














その少女の幼さをあざ笑うかのように、触れた箇所からじわじわとその熱が体を侵食していく事に彼女は気付かない。











































熱の監獄















* * * * * * * * * *




ヒョオオオ長くしすぎた感が否めない!


ナナ様、如何でしょうか。お気に召さないようでしたら修正なり書き直しなり何でも致しますので、その場合はお早めにお知らせください!忍田さんシーンが少なくて申し訳御座いません…!!


愛されというかセクハラ話だなこれ…というか忍田さん自分で書いてて最強にし過ぎだと思った。凄くない?凄まじい足音立てて走ってきたかと思えば一瞬(周りに見えないくらいの速さ)で太刀川沈めてんだよ?しかも金属の机へこませて。強過ぎィ








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