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二次創作/夢
他者との会話の中で楽しさを見出す事は決して無駄なものではない。時間の浪費という言葉は憮然として過ごす事を指すのだから。(とある番外編・If/冬島とトリガー語り/ナギ様)




「…おや、二人してどうしたのかな」



シュッと軽快な音を立てて開いた扉に椅子ごと回転して振り向くと、朔は意外そうな声を上げる。そこには冬島隊…冬島と当真の二人が立っていた。
当真はそれこそ仮眠室のような扱いで特別開発室に訪れているが、その頻度は高いので今更驚くことではない。朔の興味を引いたのは、トラッパーである冬島の存在だった。



「よう朔ちゃん、邪魔するぜ」


「俺はアンタに用があってな。当真がここに行くっつーからついてきた」



入り浸っていると言っても過言ではない当真は、早々にもてなし用に設置されたソファに身を沈める。そこには彼が持ち込んだ猫型のクッションがあり、彼はそれを枕にして寝息をたて始めた。



「…悪いな、ウチのが」


「気にしてないのでお構いなく。ところで私は敬語というものが苦手なのだが…このように話しても?」


「おー、俺は構わないぞ。気にせず話してくれや」


「それは有り難い」



楽しそうに笑った朔は、置いてあったケトルから湯を注いでコーヒーを入れる。二つあるソファの一つは当真に占拠されていたので、彼女は六面程あるパソコンが設置されたデスク横に新たに椅子を置いた。



「おう、わりいな。
…っと、これは噂の新作か?」


「ふふ、画面を見ただけで分かった人は初めてだな。その通り、新たなトラップだよ」


「何言ってんだ、ここにある図面なんか明らかトリガーの構造してんだろ。

しっかしこれが…ほぉ……」


「これは失礼。
どうだろう、トラッパーたる貴方のお眼鏡にはかなう代物かな?」



まじまじと画面に映る数式の列と図面を眺める冬島に、愉快そうな声音で彼女は問い掛けた。開発者としては実際に使う人の意見こそ取り入れたいのだ。その響きこそ楽しげだが、顔は至って真剣だった。



「…そうだなあ」


「改善すべき点があるなら遠慮なく私に言ってくれると助かる。無駄な物は何一つ作りたくないのでね」



ふむ、と何かを考えるように冬島は顎に手を当てる。その際に髭が生えた辺りを数度往復し、指と擦れたそれはじょり、と音を立てた。



「流石だと思うぞ、俺は。

特にこのトラップ発動までの時間が通常0.5秒なのが0.05秒に短縮されてる所とかな。それでいて遠隔操作が可能な辺り、トリオン消費も激しいかと思いきや今までになく省エネだ」


「いや、それでもこれはまだ未完成だ。貴方も気付いてるのでは?」


「…確かに、性能の高さに比例してこれは大きすぎるな。弧月みたいに収納出来ないタイプとしては痛い物がある」



そこまで話して、冬島はニヤリと口端を上げる。それに釣られるように朔も笑みを浮かべ、カップに口を付けた。



「試してたんだろ?」


「さて、何の事やら。冬島さんのご指摘は耳が痛い」


「いい性格してるぜ全く、朔ちゃんよ」


「貴方がそれを言えるのかな?冬島さんこそ分かってて乗ったくせに」


「違いない」



仕舞いには顔を見合わせて二人で笑う。仕事的にも性質的にも何か通ずるものがあったのか、彼らはそれはそれは気が合ったようだ。まるで古い友人同士が会話を交わすような明るさと軽さがそこにはあった。



「実を言うと、他にも色々試作品を作っているんだ。興味本位で作ったら出来たんだが、警戒区域全体を覆う大規模なものとかな」


「へえ?言うねえ」


「ただ、どれもこれも釣り合うトリオン量の者が居ないのさ。どこかからそういう人材を引っ張ってきたいねえ」


「試作品の性能テストは?やったのか?」


「データ上ならね。残念ながら私は起動出来なかったよ」


「警戒区域全体って…馬鹿にならないだろ。それはトラップというよりバリアみたいなもんか?」


「いや、立派なトラップだよ。そこに現れるトリオン兵の捕縛用のね」


「…そこまで大規模であるよりかはピンポイントでトリオン兵を狙った方が良さそうな代物だな」


「言っただろう?興味本位ってね」



締めくくるように朔がそう言えば、冬島は笑いながら冷めかけたコーヒーを口に含んだ。とそこで、彼女は彼が自分に用があると言っていた事を思い出す。仕事の話なら無視したらまずいだろうと考えた朔は、その用件について尋ねてみる事にした。



「そういえば、貴方の用件はいったい何なのかな?」


「あれ、言ってなかったか?ただ単に俺がアンタと話してみたかっただけなんだがな」


「…なんだ、そんな事か。冬島さんも気軽に訪ねてきてくれて構わないよ。

そこの居眠り猫みたいにね」



冬島が訪れた理由に拍子抜けしながら、朔はパチパチと瞬きをした。実際この部屋の扉はいつでも開かれているし、ソファで寝息を立てている奴なんかほぼ毎日来ている。当真を指差してそう言えば、彼はからりと笑った。



「じゃああいつのご相伴に預かるとするかな」


「是非また来てくれ。貴方との会話は楽しい」


「俺もだ」



そこで再び顔を見合わせて、互いに不敵な笑みを浮かべた。手にしていたカップを持ち上げて乾杯をするようにふちとふちを合わせれば、カチンと軽い音が鳴る。中身が無いことに気がついた彼らは、それにまた意味もなく笑い声を上げるのだった。


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