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二次創作/夢
自分を守るための言動が自分の首を絞めていく。それでも、私は他の選択肢の在処が分からないのです。(穂刈)




「穂刈?うん、まあ普通に好きだよ」



どう思う、と言われたからそう返しただけだった。特に深い意味は無く、その場限りの話だと思っていたのだ。ところが、後日になって仲間に尋ねられたのだ。「お前穂刈のこと好きなの」、と。
意味が分からないという顔をしていたのだろう、私の表情を見たそいつはやっぱりかと言いながら笑った。どうして、と問いかけてみると、彼は声を落として言う。噂になってんぞ、お前。

困ったものだ、と朔は顔をしかめた。

どうやら、あの口の軽い女子生徒は「普通に」という前置きを聞いていなかったらしい。ボーダーであるだけでも噂の的だというのに、更に人目を集めてしまうではないか。苛ついたのは事実だったが、当人が騒ぐとどんどんと話が肥大化していくのは目に見えている。
教えてくれた彼に向かってありがと、と返して、朔は手にしていた本に意識を戻した。








あの噂は思ったよりも早く消えたらしい。
噂好きな輩を冷たくあしらっていれば、彼らもそれが嘘だと分かったのだろう。もしくはからかいがいの無い奴だとでも思われたのだろうか。どちらにしろ面倒事が無くなったのは嬉しい限りだった。

しかし、何故か態度が変わった奴が一人居る。それは、ある意味噂となっていた穂刈篤…その人だった。
校内では話しかけないくせに、ボーダー内でよく呼び止めてくるようになったのだ。別に嫌いではないし、メールの文面もユニークだと思う。特に避ける理由が見あたらないので、朔は誘われるままに訓練を共にしたりした。だが、どうして自分なんかに関わろうとしてくるのだろう。面倒事を何よりも嫌う性質故か口が悪い事を自覚している彼女は、そこが引っ掛かってならなかった。

だから、尋ねてみたのだ。君は何で私に自分から関わろうとするの、と。
言われた本人は一瞬目を丸くする。ふいと視線を逸らしてから告げられたそれは、朔を動揺させるには十分すぎた。



「…当真から岸川に嫌われてないって聞いたからな。噂は正直驚いたけど、今なら意識してもらえるかと思った」



意識。
意識とは何の意識なのだと尋ねてしまいそうになって、彼女は慌てて口をつぐむ。聞いてしまえば最後、答えを与えられて逃げ場が無くなってしまうと察したのだ。
朔は冷たい態度を誰にでも取っているが、それはある意味自己防衛の手段である。それを共にいる事で理解したのか、彼女が何も言わなくても心得たように穂刈は笑った。



「逃げることだけはしないでくれよ」



その言葉すら朔の心をドキリと揺らす。正面からぶつかってくる相手には自分も同じように返す、という彼女の流儀を知っていての事だとしたら、たちが悪すぎる。



―朔は逃げるどころか、もう既に捕まってしまったような気分になっていた。


























自分を守るための言動が自分の首を絞めていく。それでも、私は他の選択肢の在処が分からないのです。














* * * * * * * * * *




ただ穏やかな瞳で見つめないで欲しい。気づきたくないものに気がついてしまうから。

―胸の鼓動が速さを増していることに。





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