[携帯モード] [URL送信]

二次創作/夢
遠くにいると君に焦がれる。近くにいると君が恋しい。それならきっと、触れ合えば君が愛おしいのだろう。(諏訪)




喫煙所で煙草をくわえながら、天井に登っていく煙を見つめる。設置された椅子にだらしなく腰掛けながら、諏訪はため息のような呻き声を上げた。

(物足りねえ)

それは煙草の話ではない。
彼が考えているのは、長らく会えていない彼女…朔の事だった。営業部に属している彼女は、海外に留学していた所を唐沢に引き抜かれた人物である。その頭の良さと未来性を大きく買われた本人も、それに応えようと懸命に仕事をこなすものだから色々なお偉いさんに気に入られていた。当然そんな人材が国内に留まり続けるはずもなく、唐沢と共に海外を回っている。今回も例に漏れず出張で朔は日本に居ないのだ。

(もう一週間だぞオイ…)

本来なら三日のはずが、何がどうしてそんなに引き延ばされる事になったのやら。三日の辛抱とばかり考えていた諏訪は、朔に触れられない生活のせいで普段の覇気が失われていた。要するに、彼は彼女が好きで好きでたまらないのである。



諏訪と朔の出会いは、さして前のことではない。同じ大学の学生で、かつ学部も同じだったというだけの事である。平々凡々な邂逅ではあったが、彼にとっては大事な思い出だ。
見た目が見た目なだけに、初対面の、特に女性にはびびられやすい彼だ。朔もてっきりそういう反応をするのかと思っていたのだが、彼女は予想の斜め上を行っていた。あろうことか、彼の髪を見て「綺麗ですね」と言ったのだ。これには呆気にとられた、と今でも諏訪は周りに語る。

そんなこんなで親しくなった二人は、大きな諍いも無く交際を続けていった。まさか留学の途中にボーダーにスカウトされるとは、彼も彼女も思いもしなかったが。



朔の事を考えていると、自然と煙草を吸う気が失せていった。勿体無いとは思いながらも、まだ長いそれを灰皿に押し付けて火を消す。くすぶったような音を立てたのを確認しながら、諏訪はスマートホンを取り出した。とそこで、「あっ!?」と虚を突かれたような声を上げる事となる。画面には、朔からのメッセージが表示されていた。


横に掛けてあった上着を脇に抱え、慌ただしく喫煙所を後にする。向かう先は、会議室前。「待ってるね」とだけ書かれた一文が送られてきた時、彼女はいつもそこで諏訪を待っているのだ。



「朔!!」



ベンチに腰掛ける姿を見つけて、思わずその名を呼ぶ。弾かれたように振り向いた彼女は、微笑みながらこう言った。



「―ただいま、洸太郎!」



たまらず飛びついた諏訪によって二人とも地面に転がる羽目になったのは、言うまでもないだろう。






















遠くにいると君に焦がれる。近くにいると君が恋しい。それならきっと、触れ合えば君が愛おしいのだろう。













* * * * * * * * * *




正直、恋愛なんて面倒なもんとしか思ってなかった。けどな、その考えをお前が変えたんだぞ。

―責任とれよ、この馬鹿。






[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!