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二次創作/夢
おまえのせいで雑誌デビューした(おまえのせい番外編・If/白猫黒猫様)



「う、おお…」

「……」

「…ナイスだ、朔……!」

「…嬉しく、ナイカナー」


どうもみなさんこんにちはそしてさようなら。
え?冒頭から何言ってんだって?んなもん察せよ。いつものごとく轟焦凍が原因に決まってんだろうが…!!

ただでさえハイライトのない目を暗くしていく朔を、轟ははしゃぐ子供のように表情を輝かせて見ている。着慣れないフリルがあしらわれたスカートが膝上で揺れると、朔はため息をついた。


























事の始まりは本日の朝、教えた覚えもない奴から掛かってきた一本の電話。


「朔、今から言うところに来てくれ」

「は?いや、私本読みた…」


突然の疑問符も何もない呼び出しに色々と困惑していると、時間と場所だけ告げてその電話はブチッと切れる。明らかに反論を許さないためのやり口だった。もちろんそんな要望には一切応えるつもりはなく、ソファに腰掛けて本を開く…が。時間前行動を第一とする朔は、告げられた時間が近づくにつれて集中できなくなくなっていく。

―何故あんなトラブルメーカーに付き合わねばならないのか。いや、でも私が放っておいたらあいつ待ち合わせ場所で何時までも待ち続けるのでは…?

一度気になってしまえば、もうどうしようもない。
苛立たしげに立ち上がりながら、待ち合わせ場所までの時間を時計を見て目算する。急いで準備をして直ぐに出発すれば、五分前には必ず着ける。そう確信した朔は、ルーズな部屋着を脱いで外着へと着替え始めるのだった。


―…そして冒頭へと戻るのだが。


人が理不尽な呼び出しにも間に合うように来てやったと言うのに、これは一体何の拷問なのか。


「…轟く」

「焦凍だ」

「と」

「焦凍」

「……焦凍くん、何で私はこんな格好をしているのかな」


奴が焚くフラッシュの音がやかましい。しかも何故か一眼レフで撮影していやがる。

試着室から出た途端に撮影されまくっていると、朔は最早悟りを開けるような気になった。
大胆に前がカットされたクリーム色の薄手のニットに、膝上のやや短い裾にレースがあしらわれた花柄スカート。幼少期はこういった服を着ていたかもしれないが、今となっては縁もゆかりもない格好である。轟と合流した瞬間に店へと連れ込まれ試着室に投げ込まれ、状況を理解をする前に朔はこの服装になっていた。


「すごく俺好みだ。そそる」

「やめろ。その顔で君の性癖を語るんじゃない」


いつの間にやら轟焦凍のポケットマネーでお買い上げされた商品を着たまま、二人で店外に出る。ナチュラルに肩を抱かれるのは悲しいことにいつも通りだが、最初から気をそがれた彼女には抵抗する気力はなかった。


「今日は朔を全身俺色に染め上げる。出来れば下着もそうしたかったが今回は自重しておこう」

「…自重とは…」


爛々と瞳を輝かせて足を進める腐れ縁に引っ張られながら、朔は遠い目をする。

(来なければ良かった…)

そんな事を思っても後の祭りである。
美少年・美少女カップルだ…と周りからひそひそと噂されている事にも気づかず、彼女は引きずり回されるこの後を思ってうなだれるのだった。


「ああ…宮城谷先生の新刊読みたかったのに……」

「何か言ったか?次は靴買いに行くぞ」

「アッ、ハイ」




















見事に休日を潰された朔だったが、それ以降は特に変わったこともなく日々を過ごしていた。しかし、あの悪夢のような休日から1ヶ月余りたった頃…事件は起こったのである。

その日いつも通り登校していると、何故か普段よりも視線が自分に突き刺さるのを彼女は感じていた。“観賞用個性”と称されるだけあって、個性を隠さなくなってからは周りに注目されてはいたが…。

何故だろう、と思いながらも靴を履き替えて教室へ向かっていると、やはり何かが違う。すれ違いざまに聞こえた会話は、「あの人が?」「あ〜でも納得!」というものばかり。まあ悪い噂では無いかと判断した朔は、特に気にするでもなく教室に足を踏み入れた。

すると、廊下を通った時以上に視線が刺さる刺さる。内心動揺しながらも机に荷物を置くと、クラスメイト皆が此方を窺ってくるではないか。本当に何事だ?と眉をひそめていると、机の横に誰かが立つ。朔が見上げると、クラスで一番親しくしている友人―心操人使が其処にいた。


「人使くん、おはよう」

「ん、おはよう朔」

「…ねえ、私凄く注目されてるんだけど…何か知ってる?」

「さあ…周りに聞いてみたら?」

「う〜ん…」


そんな会話をしていると、騒がしい廊下から一人の女子生徒が教室に入ってくる。椅子に座る朔を見つけるなり駆け寄ってきた彼女は、朔と共に図書委員をしている子だった。


「あっ朔ちゃんやっと来た〜!もうすごい噂なんだよ!?普通科の美人さんが雑誌に載ったーって!!」

「…は?」

「朔、君いつからモデルになったの」


モデルになった覚えもなければ、そんな雑誌に写真を送った覚えもない。怪訝そうに聞いてきた心操に答えること無く、友人が手にしていた雑誌を奪うように手に取った。


「ほら!ここのページ!一面だよ?すごいよ朔ちゃん!!」

「うわ、ほんとだ。朔がいっぱいいる」


その雑誌を見た瞬間、彼女はビキリと音を立てて固まる。
きゃあきゃあと声を上げる友人にも、興味深そうに雑誌を覗く心操にも、朔は気を払う余裕は無かった。何故なら、其処にはあの休日にしか着た覚えのない服装をした自分が載っていたのだから…。

そうだ、思い返せば奴は一眼レフで撮影していたではないか。そもそも、あの日は最初から最後までおかしかった。無駄に写真を撮られてはポーズ指定をされ、上目遣いがどうだのこうだのと…。

あきらめの境地に達していた朔は、早く解放されたいが為にその要求をハイハイと飲んだのだ。写真の中には靴を履き替えているために素足である所や、風を受けて棚引く髪を押さえて微笑む姿がある。どれもこれもあいつしか見ないと思ったから許したのであって、こんな風に大衆に晒されるとは思っていなかった物ばかりだった。言うなれば、これは完全なるプライベート写真である。


「……っっ!!」


興奮したように喋る友人の声など耳に入ろうはずもない。

ただただ怒りと羞恥で赤くなった顔を覆い隠して、朔は突っ伏した。虹色に輝く髪の毛の隙間から覗く耳も熱を持ち、赤く染まっている。
そんな朔の様子に、心操は再度写真を見てから何かを察したように片眉を上げた。近くの椅子を引っ張ってきて腰掛け、さするようにして朔の背中を撫でる。そして、未だに様子を窺ってくるクラスメイトに対して、心操は溜め息をつきながらこう言った。


「どうやら本人も知らない間に載せられたみたいだからさ、あんまり騒がないでやってよ」


噂好きな面が強いクラスではあるが、その分内部の結び付きは強くもある。故に彼らはそれを聞いて、途端に申し訳なさそうな顔をした。扉の近くにいた男子生徒は、興味津々な様子で教室内を覗いていた面々を遮るように扉を閉める。


「悪かったな岸川…」

「俺らもなるべく注目されないように頑張っからよ」

「ごめんね朔ちゃん〜!まさか同意無しだとは思ってなくて…!!」

「…だってさ。良かったね」


突っ伏したままの朔に声をかけた心操は、優しげに目を細めて頭を撫でた。大きな手にこすりつけるようにして 頭をぐりぐりと動かした後、朔は手の隙間から目だけを覗かせる。不思議な色合いの瞳と心操の瞳が重なった時、彼女は小さく呟いた。


「ありがと、人使くん…皆も」


そう言って朔は再び顔を埋める。この後すぐ、担任が教室に来るまでにクラスメイトにもみくちゃにされる事には彼女は気がつかなかった。因みに、彼女を一番撫で回していたのは言うまでもなく心操人使である。

























お前のせいで雑誌デビューした

(昼休みに轟焦凍の元へ文句言いに行ったら、両手広げて待ちかまえられていた。迷い無くUターンした。代わりに梅雨ちゃんに抱きついた。相変わらず天使だった。)








* * * * * * * * * * *


という訳で、二万打リクエスト企画終了!第十弾でした〜!!

白猫黒猫様、リクエストありがとうごさいました!遅くなってしまって申し訳ありませんでした…楽しんでいただけるなら幸いです。
いや〜難産だった…久々にヒロアカ書いたわぁ


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