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二次創作/夢
人間万事、塞翁が馬(特別隊員番外編・If/風間とラブラブ/茜様)





「ハァ!?ざけんな!!クソマップじゃねえか!!」
という台詞で有名なあの人を、あなたはご存じだろうか。他にも様々な名言を生み出している人物だが、ある光景を見た際、彼は例に漏れず同じ様に叫んだのである。


「ハァ!?
お前と朔が付き合った!!?んなもん見りゃわかんだよ!!!」


その視線の先には、ソファに身を横たえる朔とその頭を膝に乗せている風間の二人が居た。どうやら彼女はレポート提出のラッシュから抜け出した反動で疲れたらしく、諏訪の大きな声にも全く起きる気配はない。明らかに近い距離を保ったまま真顔で交際宣言をした風間は、怒鳴り返されたことに対してあからさまに不愉快そうな顔をした。


「おい、岸川が起きるだろ」

「うるせえ!!いつから!」

「は?」

「いつからだ!!付き合い始めたの!!!!あとその背後の写真撮りまくってる奴らはなんだ!!!!!!!!」


怒濤の勢いでまくし立てる彼の言葉にならって後ろを向けば、なる程、確かに一眼レフとビテオカメラを持って撮影している奴が三人いる。明らかに自隊の隊員だった。目が合った彼らは撮影を一旦止め、真剣な表情で一つ頷く。その三つの顔は妙に使命感に満ちており、風間もそれに頷き返した。
…何やら交渉が終わったらしい。


「そういうことだ」

「言葉で言え!!!」

「…注文の多い奴だな……
交際のことを一番に教えてやっただけ有り難いと思え」

「あ゛?
…俺が最初なのか」

「そうだ。
ちなみに朔とはつい十分前に交際を始めた。その後一番最初に此処を通ったのがお前だったという話だ」

「………は!!?
ちょっ、…ハァアア!!!!?」


先程よりも更に大きく(理不尽な)衝撃が彼を襲う。それに比例して叫び声も大きくなり、その音は人気のない小さな休憩スペースに反響した。ちなみにこの時、菊地原はどこからともなく耳栓を取り出して耳を押さえていたらしい。

見た目の割に結構真面目な思考の諏訪は、痛む頭を抱えて友人に説明を求めた。妙に疲れている彼に、風間は不思議そうに下からその顔を見上げる。色々と説明が足りていないのに気が付かないほど、どうやら浮かれているようであった。























―時は数刻遡る。

大学生であるが故に、朔も風間もここ連日レポート期限に追われるように手を動かしていた。彼女に至っては、理工学部の割にレポート提出の多い教授にばかり当たっていたので、余計大変だったのである。
その後、やっとの思いで期限内に提出し終えた二人は、気分転換という名目の訓練にくりだそうと本部の廊下を歩いていた。しかし、誰の目から見ても朔の足取りは危ない。大丈夫か問うてみても、いつもの凜とした雰囲気は微塵も感じられないへにゃへにゃした返事しか返さない。明らかに限界を迎えている様子だった。

流石にこの状態は色々駄目だと瞬時に悟った風間は、空いている仮眠室がないか探すことにした。が、こんな時に限って示し合わせたように一つも空きがない。ならば、と足を運んだ先が、冒頭で諏訪が叫びに叫んでいたあの場所―人気のない、言わば穴場の休憩スペースだった。


「岸川、横になれ。
ここなら人も余りいないから少しくらい寝ても構わんだろう」

「…ぬ、かざま」


―ぬ、ってなんだ。

朔にとってはただのうなり声かもしれないが、彼女に心底惚れている風間には心臓を騒がしくさせる要素の一つである。表情筋の緩い人物であれば、でれっとだらしなく頬を下げていたことだろう。

内心身悶えをするほどの動悸に襲われながら、支えていた体をソファに横たわらせる。すると、風間は自分もその頭の横に座らざるを得なかった。何故なら、服の裾を朔が掴んだままだったからである。


「かざま、んー、」

「、」

「いっしょいて」


思わず風間は、信じてもいない神に感謝した。

彼女がこんな風に甘えてくれるなんて、きっとこれから先もそうそう無い。何時もはその容姿から綺麗と言わしめる朔だが、今回ばかりは可愛いという言葉しか彼女を表すものが見当たらない。
全くもって表情が変わらないまま、堪えるように握り締められた拳だけが震えている。そんな風間の膝に頭を擦り付けながら甘える朔は、さながら猫のようであった。

―可愛い。物凄く可愛い。

最早体裁などかなぐり捨ててしまいたい気分になったが、迂闊に事を進めてはいけない。彼女は疲れ果ててこのような状態になっているのだし、もし嫌われでもしたら立ち直れる自信は彼には無かった。

だがその必死の抵抗も虚しく、ここで更に爆弾が落とされる。


「かーざま、…そーや?
そーやぁーやーやーややや」


普通ならここは笑うところである。
名前をよくわからないメロディにのせて歌われているのだから、風間はここで笑うはずなのだ。しかし、彼は顔から一切の表情を無くしていた。可愛すぎて訳が分からなくなったらしい。

その赤い瞳は完全に据わっていた。























「いやそれからどうやって付き合ったんだよ」

「名前で呼び返して交際を申し込んで了承を貰った」

「…丸め込んでんじゃねーよ!!!!!!!!」

「証拠VTRありますよ」

「写真もありますよ」

「風間さんも一緒に見ましょう」

「ちょっとてめえらは黙ってろ?」


明らかに付け込んで丸め込んで強引に自分のものにしているではないか。
色恋が関わるとこうも人は変わってしまうのか…と諏訪は空を仰ぐ。楽しそうにビデオを再生してる奴らなんか見えてない。見えてないっつったら見えてないんだよ…!!と、誰に言うでもなく彼は歯ぎしりをした。

寝ぼけている状態の彼女は、一体どれくらいのことを覚えているのだろうか。ふとそんなことが気になって、諏訪は風間の膝へと目をやる。


「…む、?」


起きていた。

起きていないと高をくくっていただけに、彼はギョッとしてその目を見開いた。あれだけ(諏訪が)騒いだので当然と言えば当然だが、てっきりまだ深い眠りの中だと思っていたのだ。もぞもぞと動いてうつ伏せになった朔は、眠そうな目でこちらを見ている。


「よォ、起きたかよ寝坊助」

「ん…すわか」

「んだよ、俺じゃ駄目だってのか?つーかお前状況分かってんのかよ」

「?」


彼女が起きたことに気が付いた風間や他の面々も見守る中、不思議そうに自分の下にある膝を見つめている。その膝の主を腹や胸、顔…と順に辿って理解した朔は、即座に離れて正座をした。(名残惜しそうに風間がのばしていた腕のことは、諏訪のみが知っていた)


「す、すまない風間…膝を借りてしまっていた」


佇まいを直して謝罪をする姿は、すっかりいつもの様である。安堵のため息をついた諏訪は、ふとそんな彼女に違和感を感じた。それは会話している風間自身も思ったことらしく、彼は相手を凝視しながら口を開いた。


「…岸川、何故目を合わせない」


そう、真っ直ぐ凛然とした眼差しと会話者の目はいつもかちあうはずなのだ。しかし、今はなりを潜めてその視線は地をさまよっている。違和感を感じないはずがなかった。ここでひとつの仮定が浮かぶ。まさかまさか、ではあるが……


「…朔、お前もしかしなくても覚えてんだろ」

「、…!!」


自身の言葉で真っ赤に染まった頬を見て、諏訪は確信した。これは余すことなく覚えている。そして死ぬほど恥ずかしがっている、と…。友人たちの恋愛沙汰に首を突っ込んでしまった気分は、なんともいえないものである。結局は生ぬるい視線を送るしかなかった。

そして、事件は現場で起きる。

真っ赤に熟れた果実を狙っていた奴が、こんな好機を逃すはずもないのだ。部下たちは決定的瞬間を待って、各々持参したカメラを構えていた。


「朔、お前は自分の発言に責任を持つ奴だ」

「…かざま…っ」

「違う。覚えてるはずだ…言ってみろ」


こういう時に名前を呼ぶあたり、風間はいい性格をしている。自分の失態に恥ずかしさを感じて全身茹で上がっている朔に、彼は容赦はなかった。ここぞと言わんばかりにぐいぐいと迫ってくる。
だから、彼女の発言は衝動的なものなのか責任感からくるものなのか定かではないが、それは確かにその唇から紡がれたものだった。


「わ、私は、蒼也と」

「…ああ」

「…お付きあいをする、と言いました……っ!!!」


―その瞬間、風間は愛しい彼女を引き寄せる。

その手に、手首に、首に、小さな耳に、赤く色づいた頬に、鼻の頭に、額に。次々とキスを落としてはその瞳を満足そうに細めた。
あまりに嬉しそうに彼が笑うものだから、朔もなにかくすぐったい気持ちになる。お返しにその瞼に唇を寄せれば、風間は突然固まって動かなくなった。

目の前で始まっためくるめくラブストーリーを死んだ目で眺めていた諏訪は、はっとする。あの風間の表情は、自分が知る限りガチ切れの前兆だ。
この現状から考えれば、あれは―


「オイ朔!!自分の身が可愛かったらサッサとソイツから離れろ!!!」

「ぇ、あ!
…!!っ〜ん、んん…!!!」


…遅かった。

元々近かった距離を更に詰められた朔は、驚く暇もなくその唇を塞がれたのである。そもそも、朔はこの年で交際経験がない。キスをするのもされるのも、全くの初経験だった。
故に、こんな濃厚なキスに耐性があろうはずもない。侵入をしてくる舌に口内を蹂躙され、舌を絡め取られ、呼吸さえままならない。

苦しさによる涙が彼女の頬を伝った時、呆けていた諏訪は我に返った。




「っ誰か本部長呼んでこい!!!
この際木崎でもいい!!保護者を!誰でも良いから!!!呼んでこい!!!!!!!!!!!!」




カメラを嬉々として構え続ける風間隊の面々の姿も、苦しそうにしながら風間の服を掴む朔の手も、諏訪は何も見なかった。



―諏訪は、何も、見なかった。























人間万事、塞翁が馬

(ちなみに本部長は五秒後に来た)











* * * * * * * * *


ということで企画第五弾でした!すみません茜様、ラブラブは無理でした。代わりにキスさせといたのでご勘弁を(笑)

諏訪さん不憫回。
書いてて楽しかった。ごめんね諏訪さん…君、ほら、あれだろ…?愛され立方体だからどうしてもそういう扱いをしたくなるんだよ……ははは!!

タイトルの意味は幸が風間ップル、不幸が諏訪さんという。幸も不幸も予測できないよね(笑)!!




…ところで、あだるてぃって需要あります?ありましたらこっそり!こっそり教えて下さい…!

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