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二次創作/夢
空が青いのはレイリー散乱によるもの。雲が白いのはミー散乱によるもの。その瞳が光り輝くのは、未知の世界によるもの。



「飛んでみたいとは思わないか」


「…出来るのか。」


「おや、突然話しかけたのにそう返してきたのは君が初めてだな。
よろしく、私は特別開発室の岸川朔という者だ。ボーダーのスポンサーでもある」


「アンタが噂の…女とは思ってなかったぜ。俺は荒船隊隊長の荒船哲次だ」


「おや、噂?
まあ…確かにこの組織内に司令に交渉をふっかける者など居ないだろうからな」


朔がニヤリと笑いながらそう返すと、荒船は帽子の奥の目を僅かに見開いた。
―所詮は噂。その内容が真実だとは思っておらず、精々骨組みとなる部分に手足が取って付けられた様なものだと考えていたからだ。



「とんだ度胸の持ち主だな、アンタ…」


「それは君達が組織に属しているからだろう?外から見たらもっとすごい奴なんてわんさかいるものさ。
視野を広げたまえよ、少年」


「……で、第一声の話だが」


「…おやおや、どうやら私はアタリを引いたらしい。こんな怪しいぽっと出の輩の話を聞いてくれるとは」


今までに数人に声をかけ、全て不発に終わっていたからだろうか。朔は嬉しい誤算、と言うように眉を上げた。確かに、突然話しかけられて物怖じせずに応える人物は稀有である。彼女もまたそれを分かっていてそういう行動をとっていたので、その分余計に嬉しそうだ。



「噂が真実とわかった以上、司令がアンタを此処に引き入れたと同意義だからな。
その肩書きも、見掛け倒しじゃないんだろ?」


「言うじゃないか少年―いや、荒船くん。さすが隊長を務めるだけある…先程の視野の件は撤回しよう。
中々良い洞察力だ、部下にほしいな」


「それはどうも。部下の件は先送りにしといてくれ」


「そうかい?

まあそれはさて置き、私の第一声の内容に入ろうか」



ラウンジに設置された椅子に向かい合わせの形で腰掛け、朔はにっこりと微笑んだ。



「言葉通りの意味さ。
オプショントリガーというのは、戦術を広げるためにも大事な道具だろう?それに加えて、君達戦闘員の願望を叶える物でもあるわけだ…

例えば空を飛びたい、とかな」


「今の所必要とされてはいないが、確かに興味引かれる物ではあるな。飛びたい、と思わない奴は居ないんじゃないのか?」


「ほう、必要というわけではない、か…。

―それを私が開発したとして…確立された戦術を打ち破る起爆剤にはなりうるかな、荒船くん?」



仮定であるのに仮定ではないような口振りに、荒船は自分がその話に強く引き込まれているのを感じた。

―…目の前の人物は、どうやらそれを夢物語で終わらせるつもりはないらしい。

その挑戦的な瞳に貫かれ、彼は体を興奮で震わせた。強気な笑みを浮かべている朔を見つめ返して、荒船もまた口元に弧を描く。



「―…良いぜ、話してみろよ」



互いに初対面。
普通ならば警戒して然りだが、目の前の人物に予想以上の面白さを感じて、荒船は先を促した。そんな彼を見て満足そうにした朔は、同時に目を細めて悪戯っ子のように笑っていた。


























「よく話をすることだ。

見た目や態度で人を判断してはならない、と言われるだろう。もしこの言葉を安っぽく感じるのであれば、君は端から相手を理解しようとしていない。何のために人に発声器官が付いていると思ってるんだい?身振り手振りでは説明しきれなくなったから、文字や言葉が生まれたのに。

欲する物があるなら行動しなければ。
声という武器があるんだ、使わないなんて損じゃないか!手に入らないと嘆くより先、諦めてしまうよりも先に、足掻いてみせればいい。私は結果ではなく過程を評価したいタイプさ」



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あきゅろす。
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