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二次創作/夢
特別隊員の受難―日常編―



「(っ死ぬ……)」


―死ぬ。間違いなく死ぬ。捕まったら死ぬこと間違いなし。


場所は三門市ボーダー本部訓練室付近。岸川朔はそんなことを思いながら、自分の駆け込み寺へと全力疾走していた。周りからはまたか、という生温い目で見られているが、当の本人にはそのことに気がつけるほどの余裕はない。ただただ、背後から迫り来るボーダー隊員達から逃げることに必死であった。
























「大丈夫か、岸川」


自身の駆け込み寺である隊室の隊長の声に、朔は力なく返事をした。


「ありがとう風間…毎回すまない」


トリオン体なので体力的には平気であったが、気力的にはボロボロである朔の姿を見て、オペレーターの三上歌歩が労るように背中をなでる。これはいつもの光景であった。


「大変ですね…特殊なトリオンを持つってことも」


「また追いかけられてたの?あいつ等も懲りないもんだね」


同じく隊室にいた歌川と菊地原の会話に、疲労を感じさせる表情でソファに腰掛けた朔は力なく笑った。


「本当にすまない…だが気を抜ける場所が此処しかないんだ……」


岸川朔という人物は本部長付きのオペレーターであると同時に、その特殊なトリオン故に隊に属さずランクにも参加していない、いわば特別隊員である。毎度のごとく追いかけられているのは特殊なトリオンが主な理由だが、実は理由がもう一つある。

それは、彼女の容姿であった。
朔のことを好きだった男子が散々その容姿をけなしたため(小学生男子特有の好きな子はいじめたい症候群)、幼い少女はそれを信じ込み、今でも真に受けている。
本人は全くもって気がついていないが、その見目は大層麗しいものであった。肩口にかかるほどの美しいぬばたまの黒髪に、涼やかな瞳を縁取る長い睫毛。白く細い首もとや手首を自分が手折りたい、と一体何人の男が想像しただろうか。
あまり表情に変化が見られない彼女だったが、平時の凛とした雰囲気に惹かれる女性も多い。しかし、幼少期の経験から無駄に周囲の反応を伺う癖がついてしまった朔は、憧れの眼差しを前に常に気が抜けない状態に陥ってしまった。故に、大っぴらに気を抜くことが出来るのは同い年の昔馴染みが率いる隊の中だけだったのである。


「まあ別に岸川さんが悪い訳じゃないし。
それよりここに来たんなら勉強教えてよ、高校の数学くらいできるでしょ」


お前はまた不躾なことを…と言いたげな歌川を制し、朔は珍しく笑みを浮かべつつ菊地原に対して返事をした。


「いつもお世話になってる分返さなきゃな…大丈夫、私は理工学部だから気兼ねなく聞いてくれ。
歌川も三上ちゃんもどうだ?」


返事を待たずに数学のテキストを持ち出す菊地原は、どこか満足そうである。注意しようとしながらも内心羨ましく思っていた高校生二人は、朔の言葉に嬉しそうに顔を輝かせていそいそとテーブルを囲った。
和気藹々と勉強会を始める隊員達と昔馴染みを優しい目で見ていた風間は、おもむろに立ち上がって廊下へ出て行こうとする。それを見た朔は、その背中に声をかけた。


「風間?どこに行くんだ?」


おまえも参加すればいいのに、と言いたげな視線に思わず踵を返しかけるが、彼にはやらなければいけないことがある。一瞬止まった足を叱咤し、隊室の扉を開けて一言返した。


「試したい戦術があるからな。模擬戦だ」


それなら引き留めるのも悪いと思ったのか、彼女は行ってらっしゃいと優しげな表情で言う。そんな顔を見せるのも自分達だけだ、と優越感を抱きながら風間はその場を後にした。








―隊長が去る際に隊員達が目配せをしながら彼に対してエールを送ったことも、風間が朔を追いかけ回していた人物をとっ捕まえてポイントをゴッソリ削りに行ったことも、朔は知らない。






















特別隊員の受難―日常編―

(あっ風間、お帰り)(ああ、ただいま)

((どうでしたか))((問題ない、搾り取ってきた))((流石です))

(…なんか皆謎の目配せを…)















* * * * * *

ついに手を出したお馬鹿がーここにーいる〜〜
……頭沸いてるわまじで…………



〇風間隊:主人公の様々な表情を見られるあたり、他のどの隊よりも数歩リードしている模様。

・隊長:
ボーダー最強のセコム(元祖セコムは忍田本部長)。主人公守り隊の隊長でもある。主人公の幼い頃を知る唯一のボーダー隊員。実は主人公が表情の変化に乏しいのはこの隊長のせい。(傍に居すぎて影響を受けまくった結果)

・アタッカー:
自分に対する悪口は気にしないけど主人公に対する悪口は滅するタイプ。主人公の事が好きな人のことも妨害する。ここぞとばかりにサイドエフェクトを活用してその情報を元に隊で会議を開く。ひねくれた言い方はするが主人公には大層懐いている。最近は膝枕してもらうのがお気に入り。

・オールラウンダー:
人良さげな雰囲気に、「コイツなら」と思われてよく主人公に近づきたい奴らに協力を求められる。それを逆手に取って隊で会議を開いて確実に潰していくスタイル。顔の割にえげつない。目立たないかと思いきやこいつが一番雑魚()を取り除くことに積極的。

・オペレーター:
主人公に師事してもらったこともあり、非常に尊敬している。密かに隊長とくっついてほしいと思っており、自隊の隊員達と共に色々目論でいる。二人がゴールインすることが目標であり、邪魔な障害物を取り除いていく事に躊躇しない。実力的に相手を隊員達が潰した後、容赦なく情報操作で追い討ちをかける。ある意味一番怖い。

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あきゅろす。
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