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二次創作/夢
おまえのせいで戦闘訓練


どうも皆さんこんにちはございます。

ついにきました今日が…皆さん岸川朔先生の次回作にご期待ください………なんて現実逃避しても目の前の現状は変わらない。



そう、何を隠そう私は―…



「お前等の為に、今日は人質役にスペシャルゲストを呼んである


普通科の岸川朔だ」


「岸川でーす…よろしくおねがいします………」






ヒーロー科の実戦訓練に参加しているのである。





相澤さんの後ろからのろのろと顔を出して皆に挨拶をすると、一様に驚いた顔をされた。中には嬉しそうに顔を輝かせる女子諸君もいる。超嬉しいさすが天使。
しかしてめえの嬉しそうな顔は見たくなかったよ轟ィ……


「あーっ朔ちゃんだ!!なんで?なんでおるん!?」


「やあお茶子ちゃん…私も来いと言われただけでそこはよくわからないのさ」


「でも人質役なら何となく納得ね」


スッと近づいてきた梅雨ちゃんにひらりと手を振ると、控えめに振りかえしてくれた。うん、安定の可愛さだね梅雨ちゃん。


「確かに…私達は敵役から人質を安全に確保する練習になりますわね。
朔さんは狙われやすい個性故にこういう状況に陥る可能性がありますし、だから私達と共に訓練することで正しい状況判断能力を養う…

そういうことでしょうか、先生」


「まあそうだな」


なんか妙にセクシーな服装だな百ちゃん…どういうことなの?谷間どころか臍まで丸見えだよ…?ヒーローってそんなかっこうしなきゃあかんの??どうなっ…
え?透ちゃん真っ裸なの!?!!?

一人で女子一部のヒーロースーツの露出度に関して思いを馳せていると、いつの間にか話が進んでいた上に隣に轟が静かに佇んでいた。
なにこいつ怖いんだけど…やっぱりお前ジャパニーズニンジャ目指してんじゃねーの…?


「朔、お前あのことに関しては先生に話してあるのか」


突然の話の内容に、理解が遅れた。数度まばたきを繰り返してやっと合点がいく。


「ああ…まあ一応話したけどね。
私個人なんて個性の前では塵に等しいから今回は大人しくしてるよ」


「そうか。

…残念だな」


「えー面倒くさいし…てか何よ残念って」

何となくだらだらと会話をしていると、召集がかかる。どうやらくじ引きでペアと順番を決めるようだ。呼ばれてるけど良いのかという視線を送ると、分かってる、と一言こぼして皆の元へ歩いていった。




















「よし、ペア決まったな」


「異議あり」


相澤さんに向けて即座に声をかける。アンタなにしらっとした顔してんだ。こんにゃろう。

「なんだ、どうした岸川」


「いや可笑しいでしょ」


どう考えてもおかしい。
私は今回人質役としてこの訓練に参加しているはずだ。しかも先程のくじを私は引いていないし、まず組み合わせ表に私の名前が載るはずはない―…のだが。


「私の名前が何故か組み合わせ表にあるんですが」


はっきりと書いてある。
組み合わせ表の一番下に、
「(ヒーロー役)岸川朔 VS (敵役)爆豪勝己」
と。
意味わからん。しかも人質どこ行ったよ。相澤さんが人質やるってか?似合わなさすぎて笑いも出ない。なんなの。


「ついでに言うと爆豪ってだれだよ」


「ア゛ァ?テメエこそ誰だ」


お前かよ。私が出てきたときから私を視線というビームで焼き殺そうとしてきてたお前かよ。痛いんだけど。私何もしてないのにイライラしてるって…お前……煮干し食べよ?カルシウム大事だよ。骨粗鬆症にはもってこいだよ。たまに歯に引っかかるけどな!!


「だって前クラス行ったとき君いなかったじゃん。知る訳がないわな」


「ああ…そういえばかっちゃんはあの時個性で備品壊したから呼び出し受けてたよね…。」


なにやら遠い目をした緑谷くんの言葉に、そんな事してたのかお前…と思わず哀れみの視線を向けてしまう。案の定煽りにしかならなかったらしく、凶悪な目元を更に鋭くさせて威嚇された。君仮にも初対面にそれってどうなの?

…ってそうじゃなかった。


「相澤さん。私嫌ですよ…戦闘参加なんて」


「お前何組も人質役やって退屈だろ。固まった体ほぐすのに調度良い」


「えええ…」


そしてそのまま無茶苦茶な理論に押し切られてしまった。くっそう…恨むからな…相澤さん……!!なんであんな沸点低い奴とやんなきゃいけないんだ…せめて他の人が良かったよう…天使とかさあ……



オイやめろ轟、貴様に慰められても微塵も嬉しくない。
























そして始まりました戦闘訓練。
私は被害者だよ〜そこいらの石ころよりも役に立たないよ〜〜と自己暗示をかけてひたすら人質役をすること約二時間。
お茶子ちゃんに浮かされたことには非常に驚きました。初めて宙に浮かんだわ。飯田くんには肩に担がれて全力逃走されました。素晴らしすぎる速度だった。轟は割愛。

そして来ましたよ謎の最終組の戦闘訓練。ほんとなんなの。めっちゃやりたくない。目の前の相手がまじでヴィラン顔してるんですけど。お前将来はヴィラン系ヒーローって絶対呼ばれるからな。これに関しては予言でも何でもなく自信がある。


「相澤さん…私を戦わせるのって私の実力が見たいからでしょ」


後ろに立っていた(笑えることに)人質役の相澤さんへ声をかけると、微かに驚いた気配がする。
なめないでくださいよ。


「さっきは無茶苦茶な話で誤魔化したみたいですけど。見たいなら見たいではっきり言って下さいよ」

―私の経歴でも見たんでしょ、せんせ。


顔だけ後ろに向けると、いつも通り眠たげなくせにどこか鋭さを秘めた瞳と目が合う。その表情は、どこか良い玩具を見つけた子供のような愉悦を滲ませていた。

「分かってんならいい。思う存分やれ、こっちも存分に観察させてもらう」


「はいはい、仰せの通りにしますよ」


「はいは一回だろ」


おかんかアンタは。

内心そんな感想を抱くも口には出さずに配置につく。一応人質役の先生は爆豪くんの後ろに立っていると知らされた。この訓練は私が戦闘向きでない個性である事を考慮されたらしく、私が人質役に触れたら私の勝ち、タイムアップになったら爆豪くんの勝ちらしい。

目を閉じて深呼吸をし、体を伸ばす。最近はちゃんと使ってない筋肉とか関節があるから…本調子はでないだろうなあ、と思いつつ、スタートの合図を待った。
















「オイ、どういうつもりだ。なんで俺が毛色の珍しいだけの奴と戦わなきゃなんねーんだよ」


声をかけられた張本人は、緩慢な動作で顔を上げると怒り心頭な生徒に口を開いた。

「アイツはよく狙われる個性だ」


「アァ!?んなこと知ってんだよ!!」


「不思議に思えよ、爆豪」


「は?」


「岸川は中学時代はその個性を隠せるほどもう片方の個性は使いこなせていない。そのせいで、よく狙われて襲われていた」


怪しげな笑みが彼の唇を歪ませた。



「何の被害もなくあそこに立っているのは何でなんだろうな?」























「では…朔さんは個性にも対応しうる実力の持ち主だと?」


モニター越しに最終組の戦闘開始を待つヒーロー科の面々は、八百万に質問されて答えた轟の言葉に驚きを隠せずにいた。


「でも個性っつっても色々あんだぜ!?本当に生身だけで対抗出来んのか?」


切島が上げた意見はその場にいる全員の総意であり、緑谷や麗日はしきりに頷いている。そんなクラスメートを歯牙にもかけず、轟はまだ訓練が始まってもいないのに、モニターに映る朔をじっと見つめていた。顔はそらさないまま、どこか艶を含んだ声で彼は喋った。


「…綺麗だぞアイツは、戦ってるときが一番」


答えになっていない言葉に戸惑いの空気が漂う中、開始までのカウントダウンが始まる。一気に皆の気がモニターへ向かった時、轟が再び口を開いた。





「―…来る」






















開始の合図を耳にし、爆豪は辺りを見回した。
今回は屋内ではなく屋外であり、市街地の中という設定になっている。
相手は戦闘向きの個性を持っていないため、機動力にも決定打にも欠ける。それは確かであり、自分には真っ正面から来ることはない。が、自分の元へたどり着くには入り組んだ地形のせいで一方向しかないため、必然的にそのルートを使ってこちらに近づくしかないと、彼は判断していた。

爆豪勝己という少年は、普段は粗暴な言動が目に付くが、戦闘中は熱くなりながらも冷静な思考を失わない。
それ故、彼の考えは間違っていなかった。役立つ個性も大した装備も持たない相手に対して、それは正確な判断であった。





―その常識に当てはまる相手であれば、の話だったが。





近づいてくる気配が一つ。

研ぎ澄ましていた耳が、微かな音を聞き取る。たとえ相手が強力な個性を持っていなくとも、爆豪には手加減するつもりは毛頭無かった。だから、油断していたわけではない。慢心を抱いていたわけでもない。ただただ、自分の敵となった相手をぶちのめす、それしか考えていなかっただけだったのだ。



―そんな彼も、モニター越しに一人をのぞいて固唾をのんで見守る面々も、一瞬の後に呆気に取られることになる。
















障害物の多い道を走り出す前に、高いところへ上ってターゲットの場所を確かめると、中々に面倒くさい位置に陣取ってくれているようだ。

(あーどうしようかなー…)

と心の中で言いつつも、取る方法はもうすでに決まっている。
地形を確認したところ、爆豪が正面を向いている前の道を行くしかたどり着く術はない。普通ならここで手詰まり、ゲームオーバーとなるはずだが岸川朔にとってはそうではない。数々の刺客を打ち破って今に至る彼女には、道が有るか無いかなど大した問題ではないのだ。


(道がないなら道を行かなければいい)


そうして朔は足をかけていた柵を蹴り、空中に体を投げ出した。




















'虹彩色'と称される髪の毛が日の光を浴びて、何色にも輝く。絹の糸のようにしなやかなそれは、風を通して空中を舞った。


轟の目に映るその姿は、初めて見たときと寸分違わず美しいままである。そこにあるだけで美しい色だが、轟にとっては、彼女が活発に動く戦闘中こそがその輝きが増す時であると確信していた。
ふっと目を細めて、障害物をものともせず軽やかに宙を舞う彼女を、一秒たりとも見逃すまいと一心に見つめ続ける。
その瞳には、熱に浮かされたような輝きが灯されていた。
















空中で身を翻し、目的の頭上へと躍り出る。
呆気に取られた顔でのお出迎えどうも、と言いたいところであるが、今は真面目な訓練中だ。だから挨拶するに留めておこう。

不思議な色合いの瞳を輝かせながら、朔はやる気のない笑みで顔を歪ませた。







「頭上からこんにちは、ですねー」






















お前のせいで戦闘訓練

(やっぱり朔は、そうしている時が一番綺麗だ)




* * * * * *

今までにない長さに私の右腕がストライキを起こそうとしておる

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あきゅろす。
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