二次創作/夢
おまえのせいで目立っている
「じゃあ本当に付き合ってないんだな!?本当だな!!?」
「うん、轟くんが勝手に言ったことだから。幻聴だと思ってくれて良いよ。」
変な発言をしてくれたせいで一時騒然となった教室も落ち着いてきた。私の心は荒んでるがな。誤解解くの大変すぎたんだけど。轟焦凍お前いったいなんの刷り込みをクラスメートにしてんだよ滅べ。その不思議な毛根滅べ。
もぎることが出来るらしい頭の持ち主は峰田というらしい。お前さっきから人の顔じゃなくて胸とか脚見てんだろ。さてはエロの代名詞か貴様…私は汚物だから構わないが天使たちには許さん。
そして自分が刷り込みしてきたことがことごとく否定されたからって、拗ねないでくれるかな轟ィ。何なんだよ綺麗系ツンドラってしかもお前と付き合った覚えはな……イタイイタイ頭肩にこすりつけんな。
「なんか轟くんが悪いね…変なこと刷り込みして。
期待外れにも程があるでしょ」
「いっいや期待外れなんてことはないよ!全然!!」
溜息混じりにはいた言葉を即座に否定してくれたのは…緑谷くんだったか。なんだお前良い奴だな。私は非常に感動した。ブレザーの裾から出した飴を渡すと真っ赤になって変なポーズをとっている。小動物みたいな可愛さ…和む……緑谷セラピーすげぇ………
ついでにまだ沢山あるから飴他の人にもあげよーっと。
女子たちを手招きしてブレザーをポンポン叩く。バサバサと落ちていく飴を見て驚愕された。一杯あるからたくさん持ってお行き。
「すげー!手品かよ!!」
「まさかそれが個性とか…?」
切島くんお主さては手品好きか。目が輝いてるぜ。
一通り飴を出し終わり、机の上に置いてセルフサービスにした。好きなのを取っていきたまえ。そしてこれはただの仕込みだから手品というほど大層なものでもないし、個性というわけでもない。残念だったな尾白くん。
「朔の個性は綺麗だぞ」
「ちょっ」
飴を口に含んでいる姿が何だか滑稽だな轟焦凍…ってオイ。お前何ぬかしてんだ。
慌てて口をふさごうと手を伸ばすもあっさりかわされる。挙げ句の果てに後ろから抱き込まれる形にされた。ちくしょう…こいつ案外力強いな…
「綺麗?」
「個性にはあまりふさわしくない表現のように思うが…」
首を傾げた百ちゃんの横にいた飯田くんが、至極もっともな意見を述べた。皆が轟か私の返事を待っている。
ツイと視線を上げると、左右で少し異なる色の瞳と目があった。言っても良いか、と言外に伝えてくる様子に、眉が下がるのが分かる。息をついて首に回されている腕を軽く叩いた。これで伝わるだろ、アンタがそれで良いなら好きにすれば良い。
無言の肯定を得た彼は、再び口を開いて説明し始めた。
「朔の個性は戦闘向きじゃない。でもよく狙われる個性だ」
「狙われる…?その個性を欲しがる人が居るということですの?」
「岸川朔という個人のまま欲しがる奴もいるし、個性が発現してる箇所だけ欲しがる奴もいる」
ますます訳が分からない、と混乱したような顔をした者が続出する中、教室の隅で静かに佇んでいた常闇がぽつりと一言こぼした。
「成る程…コレクターに狙われるような個性、ということか」
「そういうことだ」
常闇が発した「コレクター」という言葉は、聞き覚えがなくとも嫌な予感しかしない。話の続きを促すかのように、皆閉口して轟や常闇に目を向けた。
何やら重たい雰囲気になってしまった教室内に、朔は心中でひとりごちた。
(あー暗い…空気が重い…)
本人は慣れていても周りがそうとは限らないのは世の常である。しかし、不本意ながら自分が原因となった現状を打開したい。そしてクラスに帰りたい。寝たい。
いついかなる時も欲望に忠実であろうとする朔は、非常にその場から立ち去りたい気分だった。
故に、彼女は最短かつ最良の手段を取ることにした。
首に回されている腕を外し、少し前に歩み出る。視線が自分に集中するのが分かった。大きめのフレームの黒縁メガネを外し、目もと近くまで掛かっていた前髪を横に流す。久々の開けた視界だった。
「実際に見せた方がはやいんじゃないかと思ったから見せるよ、私の個性。
どうやら一部の人に人気らしいんだ」
―観賞用個性、って。
言い終えるや否や、肩口まで伸ばされている癖のない黒髪が、毛先から色が変わり始める。
白のようでいて目に痛いほどの眩しさは感じられない。どちらかというとクリーム色に近く、柔らかく輝いていた。光に当たった箇所が赤や黄色と様々に変化し、虹のように淡い色味を持っている。
白日の下に晒された瞳も、髪に似ずとも不思議な色合いで確かな存在感を放っている。
自分でも綺麗なんだろうなあ、この色とか。と感じることはあったため、ほう、と感嘆の溜息が聞こえてくると思わず苦笑いがこぼれる。なんとなく照れ臭くて目線は斜め下を向いたまま、個性について語り始めた。
「元々はこの色なんだ、目も髪の毛も。私の個性は複合個性だから、ふたつあるんだけど。ひとつは見たままだよ」
そこで百ちゃんが声を上げた。なにやら疑問に思う所があったようである。
「ではもうひとつの個性は何なのですか?」
「それも今見せたよ」
髪の毛が色変わってくの、見たでしょ。
とそこへ、轟が話に割り込んできた。久々に見せた髪の毛がどうやらお気に入りらしく、中学時代のように指に私の髪の毛を絡ませながら、だが。
オイ今真面目な話だろうが。何匂い嗅いでんだ離せ。薬用シャンプーって言っただろ。
「もうひとつの朔の個性はカメレオンそのものだ。さっきのは虹彩色っていうらしい」
「カメレオンの個性でもうひとつの個性を隠してたということか…」
一通りの実演と説明で納得したらしい飯田くんが、顎に手を当てながらふむと頷いた。
君中々に面白い眉毛してるよね。ナイス眉毛だよ。眉毛トレードマークにしようよ。
そう考えながら髪の毛を黒に戻そうとすると、轟からのストップがかかった。
「お前別に雄英入ったら身の安全保証されるって言ってただろ。
何で隠す」
内心舌打ちが漏れた。表に出さなかった私すごくえらい。身の安全どうこうじゃないんだよ。私は今まで狙われた分静かに過ごしたいんだ分かったか。
「後ろの奴らが見たいって言ってもか?」
「は、後ろ…?」
振り返ってみれば、物凄くキラキラした瞳で着実に距離を縮めてきているお茶子ちゃんや興味深そうにまじまじと眺めてくる百ちゃん…etcの視線が突き刺さること。
ウウッ天使眩しい……
えっ何?そのままが良い?いやでも黒髪黒目は最早私のアイデンティティだから。これやめたらお前誰?今更高校デビュー(笑)?状態なっちゃうから勘弁し…うっそんな悲しそうに見ないで……!!
「朔ちゃん」
「梅雨ちゃん…」
「無理強いはしないけれど、私はそちらの本来の姿の方が好きだわ。折角友達になったんだし、お願い聞いてくれないかしら」
控えめに小首を傾げる動作に呆気なく陥落した。ありがとうございますごほうびです。めちゃくちゃ可愛い。さすが天使。
「喜んで!」
おまえのせいで目立っている
(迂闊すぎる自分に気がついたのは無事スマホを返して貰ってクラスに戻った時だった)(めっちゃ質問責めにされた)
* * * * *
まさかの複合個性もち主人公ちゃん。強くあれ。
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