二次創作/夢
おまえのせいで平穏が遠のいた
昼休み。
騒がしい廊下を、人混みを縫いながら歩く。雄英はヒーロー科こそ少人数であるものの、学校全体で見れば生徒は莫大な人数にのぼる。おかげで、友人に会いに行く者や食堂に行く者、様々な人が朔の行く道を阻んでいた。
正直言って、ヒーロー科とは一生関わらないつもりだったのだ。
(肉壁に阻まれるままに帰りたい…)
と思うのも道理である。
しかし、ここで踵を返してしまえば(人質に取られたままの)マイスウィートハニースマート・フォン・ヌ・エリザベスが永久凍土の餌食となってしまう。だから、近づきたくもない道のりを進むしかないのだ。
おのれ轟焦凍許さん。今度トカゲのちぎれたての尻尾投げつけてやる。
明らかに大きすぎる扉は、某クラスの担任の言葉を借りれば合理性に欠ける。確かに個性で体が大きい者もいるかもしれないが、ここまで縦に長くして何になるのか。甚だ疑問である。お前らさては…金持ちか…知ってた……!!!
心の中でギリギリと歯ぎしりをして目の前のさながら地獄への入り口のような扉を見つめる。ヒーロー科のトップクラスの引き戸の向こうからは、全く話し声が聞こえない。
(エッ何誰も居ないの?誰もいないなら私帰って良くないか?やったーお昼一緒して共に過ごす時間増えるなんてことがないように早弁して良かった〜帰ろーっと。)
素早く方向転換をしてカンマ一秒でもはやくその場を離れんと一歩踏み出した。
「スマホ」
聞き覚えのありすぎる声に首だけ回して後ろを向く。見つめ合う。ロマンスは始まらない。始まったのはエリザベスの凍結へのカウントダウンだった。
「いいんだな?このままやっちまっても」
「非常に申し訳なく思っている」
だからやめろ下さい、後生だから。ていうかお前いつから其処にいた…?音しなかったぞ。実はジャバニーズニンジャ…目指していたのか……!?お前現代社会に適応していくつもりないな?そうだろお前さぁ…。
失礼極まりない思考ぐらいは許してほしい。だって現在進行形でマイラバースマホを返してくれることもなく、なぜか私を抱きしめて髪の毛に顔を埋めているのだから。
エッ何欲求不満なの?今第二次性徴期なの??や…やめろォ、私の家は頭皮のベタつかない薬用シャンプーなんだ…いい匂いなんかしねーよ…!!そして私のスマホ一体いつ返してくれんのお前。
「スマホなら朔がクラスの奴らに顔見せてから返す
行くぞ、」
フンフンと嗅ぎ終えて満足したのか、私の手を取っておもむろに教室に入ろうとする。
心読むな。そして嫌がってる女子を無理矢理なんて婦女暴行罪にあたるぞ貴様…アッちょっ心の準備くらいさせっ……
「準備なんかいらないだろ」
轟焦凍許さん。
そんでもって心読むな。
おまえのせいで平穏が遠のいた
(その扉は間違いなく地獄の入り口だった)
* * * * *
あれっえーぐみ入ってない?
ンン〜聞こえないなぁ〜〜(空耳)
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