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銀魂
願いは(土←銀+沖/銀時誕生記念)
「旦那、お誕生日おめでとうございやす」
沖田くんが笑顔で俺にお猪口を差し出す。
それを受け取ると横に待機していた平隊士が徳利を傾けて酒を注ぐ。
「ありがとう。…つーかさ、何で俺の誕生日知ってんの」
「アンタ何度も職質受けてるの忘れたんですかィ?」
俺に注ぎ終わると沖田くんが徳利を奪い取り、手酌で自分の猪口に酒を注いだ。
「成程…」

ちらりと壁に架けられた垂れ幕を見る。
『万事屋の旦那、お誕生日おめでとうございます』
「旦那には常日頃からお世話になってるんで、何かしてやろうということになりまして」
相変わらず上機嫌でニコニコ笑っている沖田くん。

「…土方はいねェの?」
「あの人がアンタの生まれた日を喜んで祝うと思ってるんですかィ?思い上がりも甚だしいや」
変わらぬ笑顔でそう吐き捨てる沖田くん。
あれ、この子俺を祝ってくれる為に俺を呼んだんだよね。
俺の心を痛め付ける為じゃないよね。

そういえばこの子はあのマヨラーの事が好きなんだっけ。
だから、同じく奴に想いを寄せている俺が気に入らないと。
「沖田くんさー…」
俺が口を開くと可愛らしく首を傾げて見せる。
「何ですかィ?」
きっとソッチの気のある奴なら一発で昇天するだろう。
俺は土方一筋だからそんなことはないが。

「トシィィィ!!」
何処かでゴリラの叫び声が聞こえた。
「うっせェよ、近藤さん」
苦笑を含んだ土方の声も聞こえる。
直ぐ様神楽が反応してそちらに走っていく。
「トッシー!来てくれたアルカ!!待ってたネ」
「あ?お前らも来てたのか、久し振りだな」
「お久し振りです、土方さん。来てくださったんですね」
新八が頭を下げる。
「何だかんだで真選組が万事屋の世話になってるのは事実だしな」
神楽と新八の頭を交互に撫でると、土方は此方に顔を向けた。

「よォ、万事屋」
俺に声を掛けると無遠慮に俺の隣に腰を下ろす。
「久し振り、土方くん」
俺は素っ気なくそう言うと皿に盛られた果物に手を伸ばす。
「まさか土方さんが来るとは思いませんでした」
俺と同じように素っ気ない態度で沖田くんも皿に手を伸ばす。
「まぁ、一応真選組全員参加の誕生会だからな。俺も参加しなくちゃいけまぁよ」
傍にいた隊士達が「酒をお注ぎします」とか言って土方に猪口と徳利を差し出した。

「そういえばテメェ、街角アンケートで抱かれたい男No.1だったな」
猪口を傾けながらそう言うと、目の前の男前はため息を吐いた。
「因みに俺は6位でした」
S王子が口を挟む。
思わず、テメェは抱きたい男No.1だろと言いそうになったがすんでの所で口をつぐむ。
「…興味ねェ」
煙草に火を点け一息吸うと、煙と共にそう吐き出した。
その姿さえかっこよくて、俺らは2人で見惚れてしまう。

「旦那!今日の主役はアンタってことでアンタの願いを俺達が1つ叶えて差し上げます!」
ボーッとしていた俺の肩をジミーが叩いた。
「は?願いを叶えてくれんの?」
「はい。あ、誰かを殺すとかそういう無茶なことは無理ですよ?常識の範囲内でお願いします」
いつの間にか、あれだけ騒がしかった宴会場は静まり返っていた。
この場にいる全員が俺の発言に注目している。

「じゃあ…」
辺りをぐるりと見渡す。
沖田くんと目が合った。
「旦那、常識の範囲内ですぜ?」
沖田くんがニヤリと笑ってジミーの言葉を繰り返す。

「俺の…俺の願いは…」
隊士達が騒ぎだす。
「土方と―――……」

土方が目を見開いた。
煙草を手から滑らせて畳に落とす。
宴会場が一気に静まり返る。
沖田くんは黙って立ち上がると部屋を出ていった…。



一応、銀時生誕記念小説。
フリーです。
お気に召しましたらご自由にどうぞ。

私の書く小説内では大抵幸せは訪れません。
銀時の願いはご想像にお任せ致します。

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あきゅろす。
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