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銀魂
その瞳(高銀/兄弟パロ)
「ただいま」
玄関を開けると同時に室内に居るであろう人物に自分の帰宅を知らせる。

「おぅ、おかえり。遅かったな、何かあったのか?」
踵を踏み潰した革靴を脱ぎながら質問に応えて帰りの状況報告。
「兄貴の学校のやつに絡まれてた。金髪のロン毛とハゲとデブの3人なんだけど…友達?」

校内に敵の多い兄貴は、首をかしげて少し考える素振りを見せた。
「…知らねぇなァ。第一俺の友達は十四郎だけだしなァ?」
十四郎とは兄貴の唯一の友達である土方十四郎のことだ。

中学では最強の名を欲しいままに手にし、学校一モテてた兄貴。
そんな兄貴が高校に入り、初めて自分から喧嘩を売ったのがトシ兄だった。
なんやかんやで和解して、今ではお互い一番の親友だ。

「そっか。よかった。あまりにしつこいから殴っちまったんだ」
兄貴が苦笑いをしたとき、リビングの方から声が聞こえた。

「おい、晋!まだかよ!」
「…トシ兄来てんの?」
俺の声が聞こえたのかリビングからトシ兄が顔を覗かせた。

「よぉ銀時、おかえり。邪魔してるぜ」
「いらっしゃい」

トシ兄が俺から兄貴に視線を移す。
そしてゲームソフトの空箱をぷらぷらと振る。
「じゃあ俺帰るわ。あ、これ借りて帰るぜ?」

「ふざけんな馬鹿。それまだ買ったばっかで俺もクリアしてないんだぜェ?」
ガキっぽいやり取りを始める2人に内心、密かに溜め息。
つーかそれ買うために兄貴が俺に貸りた金、さっさと返せよ。

そうこうするうちに言い合いにも終止符が打たれたらしく、リビングから勝ち誇ったような顔でトシ兄が現れた。
「三日だからなァ?」
「ああ、わかってる」
兄貴がふてくされているところを見るとどうやら口喧嘩に負けたらしい。

「じゃあな銀時」
俺の頭を一撫でするとトシ兄は廊下を抜けて玄関へと消えた。

「送って行こうか?」
兄貴がそちらに向かって声を張り上げる。
「いや、いい」
向こうからもデカい声が聞こえた後、ガチャリと鍵を開ける音がした。

「お邪魔しました」
「またなァ」
ドアが閉まる音と同時にバイクのエンジン音が聞こえた。
…不良め。

「…風呂入ってこいよ。血ィついてんぜ?」
兄貴が俺の腕を指差しながら風呂を勧める。

「いや、いい。あ…今日、母さんは?」
「出張だとよ」
ふぅん、と興味なさげに声を漏らすとカッターシャツのボタンを外した。

そして脱いだカッターシャツで腕の血を拭う。
「あーあー…」
すると兄貴がなんとも微妙な声を出した。

「…何だよ」
「お前…血って洗っても取れにくいんだぜェ?」
「うっそ、マジ!?」
ぅあー…、とか言いながら薄赤に染まったシャツを見る。

「漂白剤浸けても駄目?」
「さぁな。大丈夫なんじゃねーの?」
自分から言い出したにも関わらず曖昧なことを言い、廊下を歩く兄貴。

トシ兄が片付けてくれたのか、リビングにゲーム機は散乱していなかった。
兄貴がソファに腰を下ろしたので俺はクッションを引っ張り、床に座る。

「銀時ィ」
俺がテレビのリモコンを探していると背後のソファから俺を呼ぶ声がした。
「うん?」

「銀時ィ…」
「ひぅあ!?」
振り向きもせずに返事をすると、間髪入れずに耳元でいつもより低い声音で呼ばれる。
思わず情けない声をあげて勢いよく振り向いた。

「何すんだよクソ兄貴」
ククッという独特な笑い方が斜め上から聞こえる。
首を倒してそちらを見上げると至極楽しそうな兄貴が見下ろしていた。

「兄…貴…?」
ふと、その瞳の中に燃え上がる欲を見てしまって。
「銀…」

俺を見つめる瞳に、ぞくり。
何かが背中を駆け上がる。
嗚呼、なんと背徳的な──…



10/07/18

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