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銀魂
招待状を渡されて(高←土?/土方誕生記念)

「土方さん、朝ですぜ」
爽やかな声とともに、自分の体温で暖まった掛け布団を引き剥がされる。
「…昨日は残業だったんだよ、もう少し寝かせろ…」

土方は沖田の手から己の掛け布団を奪い返すと、それに潜り込んだ。

「あっさでっすぜーィ!」
懲りず沖田は布団の中央の、土方によって盛り上がった場所に馬乗りになり、自分の体を前後に揺すった。
「だぁーッ!!うるっせェ!何なんだテメェは!?」

余りにしつこい沖田を、掛け布団ごと跳ね飛ばす。
「おはようございやす、土方さん」
沖田は跳ね飛ばされた格好のまま土方に笑顔を向けた。

「はいはい、おはよ…」
二度寝を諦めた土方は大きな欠伸をひとつすると、のそりと起き上がった。

「あ、そーだ。さっき近藤さんに会って言われたんですが、土方さんの今日の当番は歌舞伎町の見回りに変更だそうです」
沖田の言葉に眉間にしわを寄せる土方。
「馬路かよ…。俺、残業明けだってのに」

少し間を置くと、土方は首を傾げた。
「やけに外が静かだな…。他の隊士はどうした?」
「近藤さんと宴会場にいまさァ」

そして沖田は呆れたように両手を肩まで挙げる。
「好きですからねィ、あの人は」

またか、と少しうんざりしつつ布団から抜け出すと寝間着の帯を解いた。
「因みに見回りは俺と一緒に、ですぜ。じゃあ部屋に居ますんで着替えたら声掛けて下せェ」
それだけ言い残すと沖田は副長室を後にした。









招待状を渡されて




「じーさん、万引き捕まえてやったんだぜィ?ちょっとくれェサービスしなせェよ」
「沖田さんよォ、何でアンタが来るたびに万引きが出るのかねェ。もうこれ以上はサービスできないよ」
巡回の最中に立ち寄った駄菓子屋。

よく通っているのか、店の爺さんは沖田の顔馴染みらしい。
「総悟、今は仕事中だ。後にしろ」
菓子を安くしろと文句を言っている沖田の腕を引き、店を出た。

「…あれ?旦那じゃねぇですかィ」
「あっれー?沖田くんじゃん、土方くんも」
駄菓子屋の前の公園で銀時と遭遇。

銀時はひらひらと手を振って二人に歩み寄る。
「よぉ、色男。最近調子どう?」
さり気なく目を逸らした土方に気づき、土方と目を合わせようと逸らした先に移動する。

「巡回中だ。テメェに構ってる暇はねェ」
自分の周りをちょろちょろと動き回る銀時を鬱陶しげに睨みつける。
「相変わらず冷たいねェ」
土方の冷たい言葉に肩をすくめてみせる銀時。

ああ、そういえば旦那にも。と沖田がポケットから小さなカードを取り出した。
「お、待ってました。これってもちろん新八と神楽も有効だよね?」
「はい。旦那の古い友人方もお呼びする予定なんで、喧嘩はよしてくだせぇよ?」

沖田の言葉に銀時は表情を曇らせる。
「…わかってらァ」
そしてくるりと踵を返し、後ろ手に手を振ると歩き出した。

「じゃあまたな」
「へい、またでさァ」
沖田も手を振り返すと不思議そうな土方をおいて歩き出す。


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「アノヤローならどっかこの辺に…」
ビルの隙間を覗き込みながら路地裏を歩く。

「誰か捜してんのか?」
キョロキョロと忙しない沖田を不審がり、土方は声をかけた。

「まぁ…」
曖昧な返事。
と、その時あるビルの上から桂が飛び降りてきた。

地面に華麗に着地するとすかさず沖田が駆け寄る。
「やっと見つけた!捜してたんだぜィ」
「それはすまなかった。で、例の物は持ってきてくれたのか?」

桂の言葉に沖田はポケットを弄る。
「へい、これのことだろィ?」
沖田が取り出したのは、先程銀時に渡したのと同じカード。
「有り難い」

桂はそれを受け取ると満足そうな表情を浮かべた。
「時に沖田」
「なんでィ」
「このカードで俺とエリザベス、2人が行けるのか?」
「あぁ。大丈夫でさァ」

沖田の言葉を聞き安心したのかカードを胸元に仕舞う。
「それではまた会おう!」
そして桂はふはははは、と大声で笑いながら走り去っていった。

「…総悟、今のは…」
「さ、見回りの再開と行きますかィ」
目を点にして一部始終を眺めていた土方。
沖田は何事もなかったかのように土方の前を歩き出した。

「次は繁華街ですねィ」
沖田によって次は繁華街に行くことになる。
土方はおとなしくついていくことにした。

暫く繁華街を歩いていると、急に土方が立ち止まった。
「なぁ、総悟」
「何ですかィ?」

沖田は面倒くさそうに土方の指す方を見る。
「あのド派手な赤い着流しに見覚えはねぇか…?」
「あ」
刀の柄に手を滑らせる土方を横目で見ながら、沖田は大声を張り上げた。

「高杉ィ!例のカード持ってきたぜィ!」
「は!?総悟!?」
沖田の声が聞こえたのか、煙管を右手に空を見上げていた高杉がこちらを向いた。

「何のんびりしてるんでィ!さっさと取りに来ねぇと破って捨てちまうぜ!!」
「それは困るなァ」
漸く手の届く範囲に近づいた高杉は、煙を沖田に吹き付けた。

「げほッ…がはッ…!やめなせェ!!」
土方は煙を手で払う沖田とそれを眺める高杉を呆然と見た。

「いったい、どういうことだ…?」
「そうか、土方は知らねェのか」
高杉は口をぽかんと開けている土方を楽しそうに見ると、自分の煙管を土方の口に突っ込んだ。

「ぅえッ!なにしやがる!」
「祝いだ。ありがたく受け取れ」
「は!?」

意味の分かっていない土方に不適な笑みを浮かべながら、沖田の手からカードを受け取る。
「じゃあ、また後でなァ…」

すぐにでも歩き去ってしまいそうな高杉の袖を掴み沖田は呟いた。
「待ってますから来てくだせぇよ…!」
高杉はそんな沖田の頭を軽く叩くと、耳元に口を寄せ囁いた。
「必ず行かせてもらおうじゃねぇか…。待ってろよォ」

沖田は嬉しそうに頷く。
高杉は土方に一瞥をくれると、そのまま歩き去ってしまった。
「おい、総悟…?どういうことなんだ?」

戸惑いを隠せない様子の土方が煙管を沖田に突きつける。
「いいですねィ、そんなもん貰えて。さぁそろそろ帰りますぜィ」
何を言ってもまともに応えそうにない沖田を諦めたのか土方はひとつため息をつくと「…あぁ」とだけ言った。




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