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銀魂
愛情を頂戴(高沖)
俺はまだガキだから、たったひとつの愛情だけじゃあ生きていけないんでさァ。
みんなに愛されたいんでィ。

アンタはそれを我が儘だっていいやすかィ?
でもしょうがないんでさァ。
だからやっぱり俺にはアンタも必要なんでさァ。
王子は寂しいと死んじゃうんでィ。



愛情を頂戴


「アンタは旦那と仲良いですよね」
「あ?仲良くねぇよ。アイツとは唯の腐れ縁だ」
そう言うと、奴は俺の隣で旨そうに煙管を吸い、その紫煙を俺に向けて吐き出した。
「だってアンタは旦那に執着してるじゃねェですか」
顔を逸らし、煙から逃げる。

「ククッ…俺がいつ奴に執着したって?」
何がそんなに楽しいのか、怪しい笑顔を顔に張り付けて俺に詰め寄る。
「いつも、ずっと。アンタの頭ン中には旦那の事と国の事しかない」
「そんな事ァねぇだろォ…。いつだってテメェの事を一番に考えてんだ。生憎だが銀時の入る隙間なんて欠片もねぇよ」
そんな恥ずかしい台詞を顔色ひとつ変えずにさらりと述べると、俺の前髪をかき上げ額にキスを落とした。

「だから、安心しやがれ」
「な…ッ」
何言ってやがんだ、コイツ。
呆気にとられて間抜けな顔をしている俺をちらりと見ると、喉の奥でクックッと笑っている。
「俺と銀時の仲を疑ってたんだろ?昔からデキてたんじゃないかってなァ…」
その喋り方は最早質問のそれではなく、確信めいた響きがあった。
「いつまで目ェ見開いてやがんだ?乾くぜ?」
笑いながら煙を吐く。
もろにその煙を吸ってしまった俺は見事に噎せ返るはめになる。
「う、うるせェや!つーか、俺に向かって煙吐くんじゃねぇ。匂いが移りまさァ!」
「別に良いじゃあねェか。四六時中俺の匂いに包まれてんだ、興奮すんだろ?」
「ふざけんじゃねェや。土方さんに気づかれたらどう言い訳するつもりでィ。敵との内通は局中法度違反、士道不覚悟で切腹でさァ!」

相変わらず高杉の野郎は笑っている。
笑い事じゃねェんだって、土方さんは勘が獣並みに鋭いんでィ。
「じゃあそろそろ帰らねぇと行けねぇなァ?テメェの過保護な副長様がテメェを探しに彷徨いてやがる」
「…土方さんが?」
大通りの方向へと顔を向ける高杉に、俺も釣られてそちらを向く。
あ、パトカー通った。

高杉の方へ視線を戻すと頭の上に手を置かれた。
「俺ァ京に戻る」
手が触れているところからじんわりと熱が広がる。
「また来てやるから、そんな顔すんな」
そんな顔ってどんな顔でィ。

高杉の手が俺の髪を優しく梳く。
「じゃあな」
言い終わると同時に高杉の顔からスッと笑みが消えた。
真剣な顔つきになる。
俺はこの瞬間が何よりも好きだ。
「また、でさァ」

俺は小さく手を降ると、走り出した高杉を見送った。
派手な着流しが闇に紛れて見えなくなると、そっと路地裏から抜け出す。
そして土方さんの後ろに回って肩を叩く。
「おや、土方さんじゃねェですかィ。奇遇ですねィ。これも何かの縁だ、乗せてって下せェ」

くるりと振り向いた土方さんはバツの悪そうな顔をした。
「テメェ…あんまり夜中に出歩くんじゃねぇよ」
恐らく、俺を探していたことを気づかれたくないのだろう。

土方さんは、気づいてる。
具体的には知らないだろうが、俺がみんなから隠れて何かコソコソやっていることには気づいてる。
でもこの人は優しいから俺に尋問したりはしない。
俺はその優しさに甘えてる。

「土方さん、ごめんなさい…」
パトカーに向かって歩き出したその背中に向かって小さく呟いた。
「あ?何か言ったか?」
聞こえなかったのか、土方さんが振り向く。
「何も言ってませんぜ。さぁ、帰りやしょう」

俺は首をかしげている土方さんを追い抜かして、パトカーの方へ走り出した。
「あ、コラ待て総悟!」
土方さんが追いかけて走ってくる。

高杉とは全く違う感情だけど、俺はアンタの事だって好きなんですぜ?
だから、気づかないでくだせェよ。
俺はまだ、アンタの傍に居たいんでさァ。


09,10,16
高沖。
土方は沖田をそういう感情で見てるわけではありません。
純粋に部下として、仲間として大切に思ってます。

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