いたずらなくちづけC
ふと。
フレアの手から飛び降りた猫が、番台に向かって駆けていく。
なぅう、と甘えたような声に、番台の裏からガタガタと何かが動くような音が聞こえ、唐突に我に返った2人は身を翻す。
そこから、出てきたのは────。
「・・・・・・ジェド・・・・・・と、アルド・・・・・・・・・?」
「あなた達、そんな所で何してるの?」
「いや、どこで出たものか、普通に困っていた」
無表情なりに困惑した雰囲気を醸し出しているジェドの言葉に、一気に顔に熱が集まってくる。
それはつまり、今までのあれやこれやは、全て見られていた、という事で────。
極めつけは、いつの間にか猫を抱き上げてくすぐってあげているアルドの、のんびりとした言葉だった。
「そう言えば、あれって間接キスになるんですかね〜?」
「アルド、ちょっと黙っておこうな?まぁ、うちの船の猫である以上、衛生面はバッチリだが」
────もうそこまで聞いた辺りで、キャパシティは限界だった。
ギクシャクした動きで、どちらからともなく風呂場へと向き直る。
「ちょ、ちょっと汗かいちゃったから、また入っちゃおうかしら・・・」
「お、俺も・・・・・・」
はははははは、と乾いた笑いを交わし合うテッドとフレアに、ジェドは一考した後、「わかった」と頷いた。
────かと思うと、出てきたタイスケに声をかける。
「あ、タイスケさんお疲れさまです。夕飯まだだったら、食べてきたらどうです?ついでに風呂場の入り口に『ただ今清掃中』の立て札して30分くらい放置しますけど、いいですよね」
「「いい訳あるか!!」」
期せずして揃った声でツッコむ2人の顔は、これ以上ないくらいに赤く染まっていた。
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