三者三様恋模様B
「ジェド様、どうかなさいましたか?」
「ああ、いや。・・・・・・・・・何というか、な」
一方、ミレイと共に荷物を運んでいた軍主は、不明瞭な発言と共に立ち止まった。
先程から甲板を移動していたジェドには、声は時々しか聞こえずとも、外にいる人間達のやり取りは、不思議と筒抜けだ。
今も、高い位置に居るジェドの視界には、片や頭を抱えて挙動不審なテッドと、片や決意に満ちた顔で空を見上げるフレアの姿がはっきりと映っている。
その2人から漂っているのは、『これからは気をつけよう』という、共通の誓いらしき気迫。
――何がどうしてそうなった。
手にした荷物の重みも忘れ、ジェドは思わず魂を飛ばしそうになる。
だが、再び「ジェド様?」と訝しげに服の裾を掴む、ミレイの声で我に返る。
「悪い、ミレイ。ぼーっとしてた。・・・急がないとな」
「いいえ。・・・・・・・・・テッドさんと、フレア様の事ですか?」
「ああ、聞こえていたか」
横に居たから、現在の状況は、大体把握しているだろう。
それはいいとして、今回の事を1から説明するかどうか、少し考えこんだ所で、ミレイは静かに微笑んだ。
「・・・・・・おふたりの事、特にフレア様の事を、心配していらっしゃいましたものね・・・・・・」
「・・・・・・そう、見えたか?」
海色の瞳を丸くするジェドに、ミレイは僅かにかぶりを振るう。
「はっきりとは・・・。ですが、何やら憂いていらっしゃるようにお見受けしました」
護衛でありたいと願う少女の証言に、ジェドは吐息を吐き出す。
「・・・そうか、心配かけたな。不甲斐ない・・・」
「そんな事は・・・。それで、ジェド様の憂いは晴れたのですか?」
「どうだろうな・・・・・・・・・」
事は、真の紋章の問題も含む。
だが、友人にも、姉にも、自分の幸せを願う事を覚えてほしい。
それが、ジェドの二心無い願いだ。
「・・・・・・・・・・・・結局、最後はオベルの太陽次第なんだろうな・・・・・・・・・」
「え?ジェド様、それって・・・・・・」
「・・・・・・・・・急ごう、ミレイ。これ生物だから、早くしないと臭う」
「・・・は、はい・・・・・・・・・」
――例え、その道の先に死しか無くても、いつかはこの海でまた逢える、と信じていたいから。
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