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短編
第2回拍手文


ターミナルで攘夷浪士が奇襲を仕掛けたんだって。






そう聞いたのは新八からだった。






そこに真撰組が動いたのはいうまでもなく、その日に多くの攘夷浪士が粛清にあった。

その粛清の中に血が流れたのも確かで、両方とも多くの人が傷ついた。



……と新八が追加で言っていた。




真撰組の沖田総悟がそのうちの1人だというのは包帯だらけの本人から聞いた。











というか見た。







「オマエらしくないアルな。」



公園のベンチでサボっていた沖田に言ってやった。

沖田は額と腕に包帯、頬に大きな絆創膏。
アクセント(?)に口の横に小さな絆創膏が痛々しく貼られて、公園のベンチでぼーっとしていたのだ。



「あぁ……そうだな。」





わたしはベンチの背もたれに後ろ側から腰をかけ、沖田の顔を見る。


なんとなくふて腐れたような顔をしているが、これは慰めたりしたほうがいいのだろうか。












わたしと沖田は恋人同士になったばっかりだ。

恋人と言っても、会うのは良くて週に1回だし、まだ想いが通じ合っただけ。
他にはなんにもしていない。




わたしはそれでいい。

今は、これでいい。







とりあえず沖田の隣に座る。
少し日が強いので傘で自分に日が当たらないようにしたら、沖田が見えなくなった。

それでも背に腹は代えられないのでそのままでいると、なんだかお互いが喧嘩をしているような気分になって切なくなった。



なんてことを考えていたら、沖田が口を開いた。




「ごめんな。」


……何が。


「どうしたアルか。本当に弱気アル。」

「いや、あそこで遊んでいるガキ達を見たら、俺は全然神楽と会うことができていねぇんだなと思って…。」


正面には、神楽より少し下の歳の子供達が公園を駆け回っていた。
それのどこを見てそう思ったのか、よくわからなかった。


「しょうがないアル。沖田に仕事があって、わたしにないっていう、ただそれだけの話ネ。」





最近は特に攘夷浪士が活発に活動していて、その度に真撰組が駆り出されているので、実は沖田と最後に会ったのは1ヶ月前だ。



「……強ぇな。」



沖田は子供達を見ながらいう。



「俺なんかさ、せっかく神楽に想いを伝えられたのに全然会えないし。不安ばっかり増えていってさ。やっと会えたと思ったら、こんなに包帯だらけで格好つかねぇし。」


沖田は、はっと笑う。


「もっと神楽と色んなところに行きてぇし、俺と一緒にいて楽しいって、俺の彼女でよかったって思ってもらえるように、何かをしてやりたいって思ってんでィ。」




………ずいぶん吐き出したなと、眉をひそめて沖田を見るが、そんなものは形だけだ。

だって、沖田のその言葉が物凄く嬉しかったから。

仕事が忙しい身からそんなこと考えていたなんて想像もしなかった。

『彼女』の響きがなんだか心地好くて、実感のなかった『彼女』を身に染み渡らせてくれた。





だったら私の想いも吐き出してみよう。





「………わたしにとってはさ、今の沖田の考えなんて実はどうでもいいアル。」


沖田の目が大きくなる。


「どう「どれだけ会えなくたって、もう一生会えないわけでないし、それにわたしは―――…」





なんだか言うのが恥ずかしい。





「会えた時に、沖田のそばにいられればいいアル。」




沖田の反応が気になって沖田の方を向いたら、バチンと目があってもっと恥ずかしくなった。



沖田は驚いたようだったが、やがてにこりと笑い(沖田もこんな顔をするんだと驚いた。)わたしと沖田の座っている距離を縮めてきた。



「嬉しいよ。」




そう言うと、まるでお母さんのようにふわりとわたしを抱きしめ、髪の毛でわたしの鼻をくすぐった。


めったにない行動に恥ずかしさはさらに増したが、ふわりとした感覚にずっと浸っていたくて、沖田を離すまいと背中に手をまわした。












しばらくこうしていたと思う。


抱きしめられたときに落ちた愛用の傘の影は、日が傾いたことにより形が変わって大きくなっている。



そういえば今日は平日の昼間だった。

沖田は仕事はいいのだろうか。




「土方がくる気がする。」


耳元でそんな声を聞くとふわりと体温が離れ、やがて後ろから足音が聞こえる。



「そーご!!やっと見つけた。てめェ、今まで何してやがった!!」



マヨラーが来た。



「何って、パトロールですぜ。」



わたしの目の前で副長が部下の襟を掴む図が描かれている。



「チャイナ娘と一緒にいたのかよ。……珍しいな。」



するどい視線がこちらに刺さる。
どうやら沖田は土方にわたしたちが付き合っていることを伝えていないようだ。


「なんでィ土方さん。俺と神楽が一緒にいることが羨ましいんですかィ?」



土方の腕を話ながら言っている。
きっといつものドS顔なんだろう。



「何言ってんだバカ。帰るぞ。」



土方はこちらをチラリとも見ず、ズボンのポケットに両手を突っ込んで行ってしまった。
もちろん、たばこに火をつけて。



「へーい。」



なんて言いながらこちらを向いた沖田は、少しだけ目を細めてニコリと笑い、土方の後ろについて行った。





風通しがよくなったベンチは、やがて訪れる秋の風だった。



次に会えるのはいつかわからないが、季節の風がいくつ変わろうと今の鼻にかかるくすぐったい髪を思い出してこのベンチに座っていよう。








あとがき
話が何やら意味のわからないことに。土方は拍手文に出てくるのがお好きなようです。
第1回拍手文がないのはミスで消してしまったんです。

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