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短編
2011年ホワイトデー
3Z沖神






「何も用意してねぇ。」

「なにが」

「…………ホワイトデー。」






2011年ホワイトデー






「そんなの期待していなかったアル。」

「いやでもな、最初はちゃんと考えたんでィ。……酢昆布とか。」

「オマエわたしがホワイトデーに酢昆布で満足するような女だと思っていたアルか!!」

「そう思わなかったから何も用意できてねぇんだろ。」



沈黙が横切る。



放課後の帰り道。
夕陽が2人を照らして黒い影が伸びる。




「だから…さ、チャイナに何かほしいものがあるかと思って。」

「チョコ。」

「うっ…」

「嘘アル。」



神楽はツーンとそっぽを向いて沖田を困らせる。




神楽にとってのバレンタインは2人の関係を進展させる大切な日だった。



だからホワイトデーに何も期待していなかったのは嘘になる。



この際酢昆布でもよかった気がしたのだが、神楽には1つ考えがあった。






「じゃあ、」

「ん?」

「1つお願いがあるネ。」

「なんでも言ってみろィ。」



神楽は沖田をチラリと見たあと小さくつぶやく。

















「………――わたしのこと、名前で呼んでヨ。」


「!!」








神楽は俯いたまま顔をあげない。



沖田は耳まで真っ赤にさせる神楽を見てフッと笑う。



そして神楽のあいている手をぎゅっと握った。






「神楽。」







ビクッと肩を震わせる神楽の手をさらにきつく握り、もう一度同じ名前をつぶやく。






「そ………そーご。」







神楽も沖田の手を握り返して、少しだけ沖田に近づく。





「…おい。せっかくホワイトデーに名前呼んだのに、神楽がオレの名前を呼んだらホワイトデーの意味ないだろ。」

「だって沖田の名前呼びたかったアル。」

「沖田に戻ってるし。」

「なんだヨ。どう呼ばれたいアルか。」

「……名前。」

「バカ。」

「他にホワイトデー考える。もう少し待ってろ。」

「楽しみにしとく。」




2つあった影はオレンジ色の帰り道にいつまでも1つに繋がったままになった。

それからしばらくの今まで通りだった呼び方も、自然と名前で呼ぶようになっていった。




あとがき
なんとか日にちに間に合ったけど最後が上手くまとまらずに残念な気持ちでいっぱいです。


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