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短編
4年間のおあずけ
沖神







あいつは、わたしのことをどう思っているんだろう。



付き合っているのになかなかメールをしてきてくれない。


いつもいつもわたしから。



付き合っているのになかなか手を出してくれない。


わたしはいつだって、そーごとちゅーをしたいって思っているのに。







どうしてこんなにうまくいかないんだろう。











4年間のおあずけ









恋人同士になってからは、2人で取っ組み合いの喧嘩をすることはほぼなくなって、
会えば横に並んでたわいのない話をするのが最近の日常だ。


それを姐御には羨ましがられるし、さっちゃんは銀ちゃんとの妄想をさらに膨らます(しかし未だにその恋は実らない)。



それを見て悪い気はしない。



真撰組の1番隊隊長と付き合っていることはわたし自身誇らしく思うし、何よりわたしはそーごが大好きだ。




ただ最近は、そーごがわたしのことを本当に好きで付き合っているのかどうかがわからない。



付き合ってだいぶ経つのに恋人がする恋人の証を、そーごはしてこようとしない。





なぜ?





本当はわたしのことなんてもう好きでもなんでもなくて、ただなんとなく一緒にいるとかそんな感じなのだろうか。


なんでもない時によく出会って、
喧嘩とかしてみたらなんだか気が合って、
自分はわたしのことが好きなんじゃないのかって勘違いしてしまっていたのだろうか。





でもそんなことをそーご自身に聞く勇気なんてわたしにはこれっぽっちもなくて、毎日毎日ため息ばかり。








――――こんなにしんどいのなら、いっそのこと別れてしまったほうがいいのカナ…。















そんなある日の夕方。







駄菓子屋の前で偶然会って、2人で何気なくそこにあるベンチに座る。


太陽もほぼ沈んでしまって辺りは暗かったが、ターミナル付近のネオンがこちらまで届いていて、お互いの顔は見ることができた。







久しぶりに会ったのにそーごの顔はいつものポーカーフェースで、もう少しわたしと会ったことを喜んでくれてもいいのに。そんなことを考えていたら隣から大好きな声が聞こえてきた。





「…………久しぶりだな。」



「ウン。」



本当に久しぶりに聞いた声に驚いて頷くことしかできない自分がすごく腹立たしい。
そして心なしかその声にトゲが混じっているようにも聞こえた。











だからだろうか。












考えていたことがポロっと出てしまった。















「そーご……






わたしのこと、好きアルカ?」













そーごがん?という顔をしたのがわかった。
それでもわたしは止められなかった。





「そーご、わたしと一緒にいても全然楽しそうじゃないよナ。」


「何言って「本当は嫌々わたしと会ってるとかじゃないアルか?わたしは、すっごくすっごくそーごが好きアル。でもそーごはわたしと一緒にいても話しかしてくれないし、わたしはもっともっとそーごとぎゅーってしたいしちゅーだってしたいけど全然わたしに手ぇ出してくれないし「おいどうし「わたしのこともう好きでもなんでもないんだったらこんなふうにわたしと一緒にいてくれなくていいし、いっそのこと別「待てって!!!!」













しばらく静かになった。
















「待てよ。」




あぁ、目から汗が出てきた。拭きたいのに腕が動かない。


……なぜ?


あ、そーごに抱きしめられてる。









「俺は、神楽のことを嫌いになったわけじゃねーよ。………その逆でィ。」


わたしはさらに息苦しくなる。


「神楽に会う度にどんどん神楽のことが好きになっていって、平常心を保つのがやっとなのさ。しかも毎日会ったりするわけじゃねーだろ?会う度に可愛くなりやがって……。」



やっとそーごの顔が見えた。
その顔は赤い。



「俺は神楽のこと以外考えたことねーよ。」







よく考えればここは駄菓子屋の前にあるベンチで、もう夜になるといっても駄菓子屋はまだ開いているし人通りはあるし、実は物凄く恥ずかしいことをしているんだろう。


実際人がこちらをチラチラと見ながら道をすぎるし、わたしはそーごに抱きしめられているし、
しかも見つめあっているし、
そーごのセリフもベタすぎるし。





でも実はそーごは周りを考えずに行動する人じゃない。


人に見られて恥ずかしいのを承知でこのようなことをやっているのだろう。







だから、それが嬉しかった。










それでもわたしは照れ隠ししかできなくて、
「それならどうしてわたしに手ぇ出してくれなかったアルか」なんて皮肉めいたことしか言えない。



「―――我慢してたんだよ。」



そーごはいきなりわたしの手と自身の手を絡めてきて、先立って歩き出した。





さすがに駄菓子屋の前にいるのは恥ずかしくなったのだろうか。






「神楽、まだ14歳くれーだし、俺も仕事あるし、もうちょっと神楽が大人になってから手を出した方がいいんじゃねぇのかって1人で考えてた。」

「……そんなの関係ないアル。」

「でもよ、俺は神楽を大切にしたかったのさ。同意の上でも、やっぱり神楽の歳は考えねぇとな。」

「……嬉しい。」





本当に嬉しい。
そーごはわたしのことを嫌いなのではなくて、大切にしていてくれただけだったのだ。





「だからさ、日に日に可愛くなっていくもんだから、我慢するのが大変で。平常心を保つには顔を変えないのが得策だって思い付いて、顔を大仏みたいにしていたら逆効果だった。」




そーごはハハと笑う。




「ごめんな。」



そうやってこっちをみるそーごの真剣な顔はとても格好よくて、ただ黙って頷くことしかできなかった。








気づけば万事屋の前。








「もう帰るヨ。」

「送ったんじゃねぇ。」



そう言って手を繋いだまま万事屋の建物と隣接している建物の隙間に連れ込まれ、そのまま神楽がしたかったことをされた。



初めて感じるそーごの唇は、少し甘く、少し酢昆布の味がした。




「……手、出さないんじゃなかったアルカ。」

「無理。神楽がエンジン付けた。」

「ウン。」

「でもちゅーまで。」

「ウン。」

「神楽が18歳になってからな。」

「………ウン。」




そーごは(性格に合わず)ふわっと笑ってからわたしの頭をくしゃとなで、それからもう1度唇と唇を重ねた。


「じゃーな。次会う時は俺が我慢出来る程度に可愛くなっとけよ。」





そうしてニヤリと笑って風のように去って行った。





時間がないときのそーごは、わたしには言わずにぱっと事を済ませあっという間にいなくなる。

そしてたぶん今日も。




あのあと家に帰ってテレビを見ていたら、攘夷浪士を粛正する真撰組の姿がニュースで流れていた。




テレビの中の1番隊隊長はわたしの恋人なのだ。






そう思ったら急に恥ずかしくなって、「可愛くなりやがって」のセリフに、わたしはいつ可愛くなっているのだろうと首を傾げる。



そのことを銀ちゃんに聞いてみたら、恥ずかしいことを言いやがってとつぶやいたあと「牛乳を飲め!!牛乳!!」などと意味のわからないことを言われた。


銀ちゃんはいちご牛乳しか飲めないくせに。


わたしはいちご牛乳をたくさん飲んだ。




そしていちご牛乳で口の周りにピンクのヒゲを作りながら、4年後の自分の姿を思い浮かべ、今のそーごの姿を思い浮かべ、いちご牛乳でお腹いっぱいなりながら、そーごを大好きな気持ちで胸をいっぱいにするのだった。






あとがき
ベタベタで気持ち悪くなりました。本当すみません!!










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あきゅろす。
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