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短編
祭とあるべき姿
3Z沖神





祭とあるべき姿






最近の銀魂高校の放課後はトンカチを叩く音や人が人を指示する声などでなにやら騒がしい。


生徒の手で造られているものは、『チョコバナナ』や『焼きそば』などカラフルに書かれている。





お分かりだろう。




文化祭である。






3Zの教室はなぜか文化祭の準備をしていない。


小説を読んだ人はわかる通り、3Zの文化祭へのやる気、向上心は皆無であったため、あの作品になど準備期間は必要なかっただろう。











同時刻の屋上。






沖田と神楽はぼんやりと空を眺めているところだった。


「………オマエ、いいアルか。風紀委員の仕事。大串くん探しにくるアル。」


「いいんでィ。あんなやつ。風紀委員の仕事なんかやってるより神楽と一緒にぼっとしていた方がテメーもいいだろ?」


「……さらっと恥ずかしいこと言うナ。」





これでも神楽の精一杯の愛情表現。


2人は3Z公認の恋人同士だ。


それは沖田がクラス全員がいる前で神楽に告白をしたから。


屋上へ逃げた沖田とそれを追い掛けた神楽が手を繋いで教室へ戻った時から、2人は公認のカップルとなったのだ。



その2人が恋人同士として迎える最初で最後の文化祭がもうすぐ来る。





2人は文化祭を一緒にまわれないことをわかっていた。





風紀委員の沖田は文化祭中はずっと見回りをしなければならない。


「サボるぜ」なんて沖田は言っているが、銀魂高校の文化祭はシャレにならないぐらいタチの悪い人が暴れる。沖田をサボらせないように神楽は土方から言われていた。
沖田自身もサボれないことをわかっているだろう。



「―――文化祭さ、1人でまわるから沖田は風紀委員の仕事ちゃんと行ってヨ。」





こんなこと言わなくたって、2人の中ではもう暗黙の決定事項となっていた。















――寂しくないといえば嘘になる。


文化祭、一緒にまわりたかったアル。
でも風紀委員がいることによって学校の平和が保たれるのは確かだし、何より風紀委員の仕事をしているときの沖田の姿が意外と好きだ。


外からその姿を見ることができるだけでもわたしにとっては十分。















―――悔しくないといえば嘘になる。


………神楽と文化祭をまわりたかった。
風紀委員をやっていることをこんなにも後悔したことはない。

それでも以前神楽がつぶやくように、風紀委員の姿の俺が好きだと言ったのを聞いた覚えがある。
だから、その言葉を密かに胸に秘めておけるだけで俺は十分なんだ。















そうして迎えた文化祭当日。












神楽はマダオが作ったお好み焼きをむしゃくしゃと食べながら屋上で学園祭の様子を眺めていた。



(――楽しそうアル。)



最後の文化祭はまぁそれなりに楽しいものだったが、やっぱり何かが足りない。


マダオのお好み焼きはそれなりにおいしかったし、
新八のお通ちゃん親衛隊の姿もおかしかった。
そのお通ちゃんを人質にとった犯人を捕まえた銀ちゃんはかっこよかった。





もう、満足してる。





最後として十分な学園祭だった。











それなのに、















それなのにどうして、








こんなに涙が溢れてくるんだろう。












何かが足りない。


ずっと望んでいたことが、
そうありたかったことが、










そーご。









やっぱり、やせ我慢をしたところでわたしの気持ちは全然変わらない。

変えられない。





そーごと一緒に学園祭をまわりたかった。


手を繋いであるいたり、
1つのものを2人で食べたりしたかった。






それでもしょうがない。






我慢ぐらい覚えてる。






そう思いながらも地面のコンクリートを濡らす黒い円は消えない。

消えるどころか円はどんどん増えていく。





―――もう、帰ろうか。














「なぁーに泣いてんだよ。」



後ろに立つ学ランの気配。



心臓がドクンと跳ねて振り向くと、つい今まで考えていた顔がそこにあった。



「だって―……」



そう言いながら涙をふこうとする神楽の手を沖田はぎゅっと握りしめ、反対の手で神楽の涙をぬぐう。




涙を拭えば拭うほど、神楽の涙はどんどん溢れてきた。




「はは、涙消えねぇな。」




そう言いながらも拭う手を止めない。




「風紀委員の仕事は?」


「土方がさ、今日はもういいって解放してくれたのさ。確かにあらかたやることも片付いてたし、今ここに参上したんでィ。ヒーローみたい?」


「何言ってるアルか。」




そう言って神楽は沖田に抱き着く。




「ごめんな。」




沖田は神楽の頭を優しく撫でた。

その優しさが、今日1日寂しい思いをしたことを思い出させてさらに涙が溢れ出す。






「そーご。」



「なんでィ。」



「かき氷が食べたいアル。」
「俺は焼きそば。」

「わたあめも食べたい。」

「じゃあお好み焼きも食べてェ。」

「ケーキバイキング。」

「いやそれは無ぇだろ。」





そんな鼻を啜りながらの会話はやがて屋上から消え去り、公認のカップルが校内を騒がせることとなる。










あとがき
文化祭の話がやりたかったんです。







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あきゅろす。
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