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短編
オマエダケ
オマエダケ










真っ暗だ。


私1人しかいない。


……そーごは?


さっきまで一緒に公園で話をしていなかったっけ。


公園はあんなに暖かったのに、ここはこんなに肌寒い。
腕をさするが意味がない。




『神楽。』




――――お兄ちゃん?


手招いている。


昔と同じ笑顔。
でも何かが違う。


あぁ、周りにいる人が違うのか。


じゃあ、あの笑顔は………





気付くと私は床に倒れている。
お腹から血が流れ出る。


…これ、お兄ちゃんがやったの?


待って。


行かないで。


1人にしないで……

そーご…







「そーご!!」



ぱっと目を開けると先ほどまでいた公園だ。

周りはよく晴れた空のおかげで地面は太陽を反射し、キラキラと光って眩しいぐらいだ。


「神楽。」


見上げると沖田がいた。


「大丈夫か?ものすげぇうなされてた。悪い夢でも見たか?」


神楽はベンチに座り込み、沖田に肩を抱かれ、番傘の影の中を寄り掛かっていたようだ。


「神楽、公園を歩いている最中に倒れたんだよ。傘さしてたのにな。覚えてるか?」


神楽が呆然としていると沖田が話し掛けてくる。


「なんか、飲みたいものとかあるか?買ってくるぜィ。」


沖田は神楽の頭を撫でる。


神楽は首をふる。


「ここにいて?」


沖田の手を握る。


「怖い夢見たアル。……バカ兄貴の夢。」


沖田は神楽の肩を抱いたまま、神楽の話を聞く。


「その夢でもう元の位置には戻れないのかなァって思ったネ。次に会った時は、私も銀ちゃんも……そーごも、殺されちゃうかもしれないネ。……怖いよ。」


神楽の服の上を番傘で出来た黒い影と日の光りの境界線がくっきり写り込み、影が兄を写しているようだった。



黙り込む沖田。



「………ごめんアル。変なこと言って。もう気分も良くなったからどこか行こっか。」


沖田の目を覗き込む神楽。


「俺はさ、」


遠くを見ながらポツリポツリと話始める。


「自分の姉貴から愛された覚えしかねぇんだ。だから神楽が肉親に狙われる恐怖とか、全然わからねぇんだけど……。」


ふっと神楽の目を見る。


「神楽を、守ってやることはできると思う。」


ベンチの上で抱かれていた肩はいつの間にか手を重ねられていた。


日の位置がかわり、影の位置の範囲が小さくなってゆく。


神楽はなんとなくプロポーズをされた気がして、俯いて顔が赤くなるのを隠した。


それからふっと笑って
「銀ちゃんは守らないアルか?」
なんて照れ隠し。


「旦那は俺が守る必要なんてねーだろィ?だいたい、どうして旦那まで守らにゃならねーんでィ。神楽限定な。」

そう言って、見つめ合っていた目を背けてしまった。


それを神楽は残念に思いながら、自分で言った言葉に対して照れてしまった沖田が、愛しくてしょうがない。


夢のことはとうに忘れて、それでも沖田の言葉だけはこころに残って、時たま吹く風を感じながら、もうしばらく椅子に座っていた。









あとがき
短編の短編みたいになっちゃった。
お兄ちゃんが出てきたのはその時の管理人の気分です。







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あきゅろす。
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