two 「!流石アリス、お美しい…!!!」 「い、いや…似合ってないし…」 「そんな事ないっス!!!よくお似合いですよ!!」 「………」 「どーだー?アリス」 ひょっこりと中を覗いてきた山本君も私を見て可愛いのなー!なんてにこにこしながら言ってくる。 ちょっ、止めて、照れる。 「…そ、それより……いいんですか?こんな、高そうな服、本当にタダで貰っちゃって……」 私が一番気になっていた事を口にすると、二人は一瞬ぱちくりと瞬きした後、笑いながらこう言った。 「勿論です!!!アリスからお金なんて取りませんよ、そんな!!」 「むしろアリスがその服じゃねぇと俺らも落ち着かねぇしな!!」 「………はぁ……」 そんなもんなのかな…。 まぁ二人がいいって言ってくれてるんだし、お世辞まで言ってくれたんだし、ここはご厚意に甘えて貰っておこうかな。 …そう思った、時だった。 「その代わり」 ハリーの声が響いて、私は彼を見た。 ……何だろう。 「その代わり、…って言ったらアレなんですけど……俺ら、あるモノが欲しいんです」 「……?…あ、はい!私があげれる物なら何でも!何が欲しいんですか?」 私がそう言うと、ハリーは顔一杯に喜びの色を湛えて、満面の笑みでこう言った。 「腕」 「………は?」 「アリスの腕、俺らに下さい!」 その言葉と同時に、私に何かが振りかざされた。咄嗟に横に転がって、何とかそれを避けられたけど。 ……恐る恐る見ると、さっきまで私が居た所には、巨大な裁断鋏が沈んでいた。 「…っ……!!!?」 「アリス、避けちゃ駄目っすよ!!痛いですから!!」 「よ…避けなくても痛いです!!!ていうか、じょ、冗談ですよね!!?」 「まさか!本気ですよ!」 「っ…う、腕なんか貰ってどうするんですか!!」 「食べる」 まるでそれが当たり前、とでも言うかのような顔で答えたハリーに、冷たい汗が背中を伝ったのが解った。 なに、この人、可笑しいよ。 「た…べる?嘘…冗談でしょ?」 「だから本気ですって」 「わ、私なんか食べても美味しくないよ…!!!」 「何言ってるんですか!!アリスの肉はこの世で一つしかない、絶品の肉なんです!!さっきからいい匂いがして、もう食べたくてしょうがなかったんです…!!!」 「(それであんな顔近づけてたの!!?)」 きらきらと目を輝かせながら迫ってくる彼にこの話が冗談ではない事を悟った私は、慌てて試着室から飛び出そうとした。……だけど、 「きゃっ!!!」 誰かにぐいっと引っ張られ、果てには床に押し倒されてしまった。顔を上げると、にこにこと笑顔の山本君が、私の上に覆いかぶさっているのがすぐ解った。 「嫌っ…どいてよ!!!」 「アリス、逃げんなって。ぐいっふわーザシュッですぐ終わっから!」 「そのザシュッが嫌なのー!!!」 ……この山本君に押し倒されてるって状況は普通だったら嬉しいんだろうけど、彼の後ろから迫る鋏を持ったハリーを見れば生憎そんなドキドキなんて感情は持てない。 寧ろ、恐怖しか。 「うっ、ふぇ……いやだぁ…」 「お、おい…泣くなって、アリス。ちゃんと残さず食べるからさ」 「そういう問題じゃ、ない…………ひゃっ!」 変な声。自分から出たその声にびっくりして山本君を見れば、彼は私の服をはだけさせて私の肩周りを丹念に舐めている。 舌のざらざらした感触と生温かさが、気持ち悪い。 「ひゃ、あ……やめ、て、んっ、あ…」 「…こうすれば痛くねーだろ?」 「オイ被服馬鹿!!!アリスを汚してんじゃねぇ!!」 「ハリーも舐めてみろって、超美味いぜ?」 「アリスが嫌がってんだろうが!!」 「そーなのか?声は出てるけどな………じゃ、さくさくっと切っちまうか!!」 山本君のその声に、ハリーは舌打ちしながらも裁断鋏を大きく振り上げる。 私はといえば、それを目を見開いてただ怯える事しか出来ない。 「(もう、駄目だ……)」 ←→ |