12月24日
「空気圧?」
曙覧に聞き返される。
「うん。帰ったら話すよ。」
俺はマイクを置き、彼女達を外に誘った。
冴子は最終的には笑い、キスして別れを告げた。
キョーコはひたすら泣き続ける。
「一生の別れって訳でもあるまいし。」
「ううん。私には分かるの。もう会う事はない、って。」
あなたの全てを手に入れた人が羨ましい、と言われた。
残酷な終焉を迎えたのに?
俺達の事、何も知らないからだ。そんな事言えるのは。
ユカが幸せだったかは俺には分からない。
「ずっと気になってたんだけど。」
何?と俺は顔を上げる。
「前に会った金髪の人って誰?」
「姉貴。」
そうなんだ、とキョーコは言い、しばらくためらった後に
「誰かが亡くなったの?」
「うん。言葉を借りるなら、『俺の全てを手に入れた女』がね。」
キョーコはまた静かに涙を流した。
「でも、俺達の子供は生きてるかもしれないんだ。」
夜空を見上げたが、星なんか見える訳ない。
こんな汚れた空気じゃ星の瞬きは届かない。
しかし、星達は確かに存在する。
「だから俺は、それだけを糧に生きて行く。」
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