過去形 「…。 え、あ…。」 私は明らかに挙動不審になってしまった。 彼女は動揺する事もなく、 「聞いてるかしら? 息子が、いたのよ。」 と、言った。 「いやあの、全然あんまり知りません!」 自分でも訳の分からない弁解をする。 彼女は「別に、誰に話しても構わない事なんだけどね。」と、僅かに微笑む。 「反応、されると悪いから。」 「反応…ですか?」 「えぇ、特にアナタみたいな人にね。 傷付く必要のない事でも、アナタは心を痛めてしまうから。」 「私、そんなに優しくないです…。」 「そうかしら? 『他人は他人』って、割り切れるタイプじゃないでしょう?」 どうだろうか。 「その点、タカは付き合いやすいわ。あのコはそういう所、気丈に出来てるから。」 私より、アッケの方が優しいと思うけどな…。 「…亡くした、んですよね…?」 「そうよ。」 きっとアッケからしたら、後向きだと思われるだろう。 しかし私は、亡くなった人の思い出を語るのは大切だと思う。 [前へ][次へ] |