『ありがとう』 アッケが車を出した、その時。 今日は少し暑かったので私たちは車の窓は開けていた。 「え、なぁに?」 私は運転席と助手席のふたりに、声をかける。 「は、何?」 逆に聞き返された。 「…今、なんか言わなかった?」 「いんや。」 アッケは普通に前を見て運転しているし、聖菜ちゃんも静かに涙を拭きながら首を横に振る。 通行人の声でも、耳に入って来たのカナ? 記憶にある限り、歩道を歩く人影は見えなかったけど。 しかも最後部に座る私の、更に後ろから聞こえた気がする。 …。 …まさか、ネ。 [前へ][次へ] |