欠けたモノを埋めるモノ 「ね、アッケ。龍二サンて…、」 車に戻った私は、疑問をぶつけた。 「誰とあそこに住んでいたの?」 返って来たのは、意外なような当然のような…答え。 「乳母っつーかベビーシッターみたいな人と、後見人に選ばれた執事みたいな人?あとカテキョみたいな人? 撫子に聞いたが、良くは知らん。」 後見人て、アリスサンのお父さんだっけ。 彼が選んだ執事、か。 「料理人だのメイドだの、人数はかなりいたらしいで。」 …本物の『王子様』なんだもんね。 「金で雇われた人間に囲まれて育つと、あんな性格になっちまうってこった。」 …。 寂しかっただろうな…。 「それすら、欠落してんょ。 基本、なんも感じねェ。なんも思わねェ。 そんなヤツだったろ。」 そう言われてしまえば、確かにそうだと思う。 非道な訳でもなく、冷酷な訳でもなく。 『感情の欠落』 しかしそんな彼の、そうじゃない一面。 優花サンの事。 もし彼女が生きて龍二サンと一緒にいたなら、彼はどんな人生を歩んだのだろうか。 私より他の誰より、切にそう願っていたのは…、 彼本人だろうけれど。 [前へ][次へ] |