持ち主は…
今夜一晩このホテルに泊まり、明日からはセント・キルダのコンドミニアムに移動する。
「そういえば、パブでもらってたメモって何?」
「あァ、兄ちゃんが職場の番号教えてくれたんだ。困った事があったら連絡くれって。旅行会社に勤めてるらしい。」
「へぇ〜、親切な人だね。」
「金になると思ったんじゃねェの?ま、この兄ちゃんんトコ通してレンタカー借りっか。」
ふぅん…。
「したら、早めに墓参り済ませちゃおうかね。
何か人のモン持ってるのってのも、落ち着かねェし。」
「…それって、お墓に入れるの?」
優花サンの、遺書…。
「いや。」
じゃあどうするの?
「燃やす。」
「えッ!?燃やしちゃうの!?」
私はその答えにびっくりした。
「だってでも、そんな事したら…。」
…なくなっちゃうんじゃん?
「必要ないよ、誰にも。
この世に残ってたってな、」
アッケは昼間買ったポートワインをゆっくり飲み干し、こう言った。
「誰にも、何の意味もないんだよ。」
優花サンは、龍二サンの…ものだから。
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