派遣先 「孤児院の散髪、頼まれちってな。」 孤児院!? 私は正直、驚いた。 「…やっぱいい顔はしねェよな〜。金んなんねェし。交通費…もなぁ…。」 「え、あ、違うよ!お金どうこうじゃなくて…。」 その言葉、どうしても負のイメージが強い。 「あ〜、いや。なんつーの?養護院? いや、俺も違いが良く分かんねェんだけどさ。」 アッケはビールを手に、キッチンから戻って来た。 「今までソコ出身の人がやってたんだと。 ま、全くの素人らしいけどな。手先がちょい器用なら、子供の散髪なんか簡単だしょ。」 「ふぅん…。」 どこにどう反応したらいいのか、戸惑う。 「でな。就職先で地方に転勤になって、もう行けないからって。 超巡り巡って、俺んトコに話しが来たんょ。」 「うん…。」 「で、場所が千葉なんょ。」 「うん…。」 とりあえず相づちをうって、おとなしく話しを聞く私。 「お前さぁ、テレビなんかでそーゆートコ見たトキある?」 ある。 保育園に預けっぱなしで突然、失踪してしまった母親。 虐待を受け、保護された後の居場所。 或いは、生後間もなく道端に捨てられてしまった。 様々な事情と心傷を抱えた子供たちが、集まる場所…。 [前へ][次へ] |