8 オレはただボンヤリと、動き回る龍二を目で追っていた。 危険だし邪魔だから、と、今日はメガネではなくコンタクトにしているヤツを。 わざわざ、こんなんのを見に来る女共の気が知れねェ。 「地味だな、嫌いじゃねェけど。『守備の終わりは攻撃の始まり』ってか。」 オレにはなにがどう地味なのか、また逆に派手な試合がどんなんなのかもサッパリ分からん。 と、その時、ボールを手に入れた龍二の表情が変わった。 これまでは短いパスで確実につなぐようにバスケット下までボールを運んでいたスタイルが一転し、突然の速攻。 相手チームは全くと言っていいほど対応出来ず、龍二はドリブルでカットイン。 急激な展開に会場が一気にわいた。 それは、一瞬の出来事だった。 勢い良くフロントコートに切り込んだ時、ちょうど真正面に相手ディフェンダーがいた。 龍二はごくわずかな距離をとり、限界すれすれでそれをかわす。 期待感と危機感による歓声が過熱した、その瞬間。 かわしたディフェンダーの後ろにいたもう1人のディフェンダーと、龍二は激しく衝突した。 「あっ!!」 オレとアニキは同時に声を出す。だがアニキはすぐ冷静に状況を判断していた。 「手前のヤツで見えなかったんだべ。ブロッキングだ。」 相手ディフェンダーにより進路妨害のファウルだと、アニキは言った。 [前へ][次へ] |