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「ホレ、あったぞ。」
オレがクッキー片手に呆けていたら、アニキがビデオテープを持ってリビングに入って来た。
「おォ、帰ってたんか。つーか曙覧オメー、それ何!?」
それを目ざとく見つけられた。
「オレんじゃねェよ、龍二の!」
「だろうな。オメーにゃ手作りクッキーもらえるほどの甲斐性ねェよな。」
ムカつくが、事実だ。
「あーざーす!」
龍二はクッキーには目もくれずビデオテープに一直線。
「オイ、それなんのビデオょ?」
手作りクッキーよりいいもんなのか。
「ペイサーズ。先週の。」
「は?」
ペイ…?あんだって?
「NBAの試合。残念ながらオメーが期待してるようなビデオじゃねェぜ。」
「なんも期待なんかしてねェし!」
ッせーな、バスケバカ共が!
「櫂先輩、『見てないんなら紫亘先輩に借りろ』って。」
「おォ、レイちゃん元気?もうすぐWリーグだべ?」
「28日から。すごいピリピリしてるよ。」
「そらしょーがねェだろ。」
「紫亘先輩の『地獄の特訓』を知ってる俺ら2年は平気だけど、1年なんか半ベソもんだよ。」
と、龍二は笑った。
そう。オレの目の前で、今ヤツは笑っている。
コイツのドコが『暗い』?『しゃべらない』?
お前どんだけ二重人格なんだよ、とオレは心の中で憎まれ口をたれていた。
「じゃあまたね。」
「なにお前、帰んの?」
龍二はタバコを消してビデオテープをリュックにしまった。
「うん。これ見たいから。」
そう言うと、ヤツはさっさと帰ってしまった。
クっソ。女にドヤされていたの、からかってやろうと思ってたのに。
つーかこのクッキー、どーすんの…?
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