4 「だって浜荻ってすげー暗いじゃん。友達いねーし。」 「そうそう、授業以外でマトモにしゃべってるとこ見た事ねーよ。」 龍二と同じクラスになった事のないオレは、学校でのアイツを全然知らなかった。 「つか、メガネだし。」 「メガネってお前、それどんな差別だよ。」 確かに龍二は極度の近視でビン底みたいなメガネをかけているが、だからってそれだけで『暗い』?『友達いない』?『しゃべらない』? 正直、オレは入学した時から「高砂 紫亘の弟」のレッテルを貼られていた。 もちろん寄って来るのもソレ系のヤツばっかで。 それが原因で、龍二にはあからさまに避けられていた。だから、学校ではオレ達はほとんど関わらなかった。 「ん?タカどうした?」 「や、別に。」 この陰口に反論したところで、アイツはきっと迷惑に思うのがオチだろうよ。 お前のためにオレは黙っていてやっているんだかんな。 「ただいま。」 弁当箱しか入っていないカバンを放り投げると、見慣れたリュックのちょうど上に着地した。 「おかえり、曙覧。」 持ち主は他でもない、龍二。 「あ、そうだ。俺さっきクッキーもらったんだけど食べる?」 ヤツはオレのカバンをどかし、自分のリュックから小さい包みを出して寄越した。 「コレ、手作りだべよ。」 そんなもん、オレが食って良いはずがない。 「え?何?」 龍二は右手にリモコン、左手にタバコを持ってテレビの前に座った。 ちっともオレの話しなんか聞いちゃいねェ。 [前へ][次へ] |