18 雨上がりの、とある朝。 「お?」 遅刻ギリギリで校門に滑り込もうとするオレの視界に、龍二の背中が映った。 「よう、珍しいな。お前が寝坊か?優等生!」 肩をポンと叩く。 優等生、とは半分は嫌味だが半分は事実で、コイツは1年の時からずっと無遅刻無欠席だった。 「…え?あ。曙覧か。」 オレはそのまま通り過ぎようとしたが、出来なかった。 「何だお前、その顔!」 「ん?ちょっと…。」 メガネの下の龍二の瞳は真っ赤に充血していて、まぶたは酷く腫れていた。 まるで、一晩中泣き明かしたかのように。 「どうした?」 「何でもないよ。」 龍二はうつむき、足早に昇降口へと向かって行ってしまった。 オレは休み時間に龍二の教室を覗いた。 アイツは机に突っ伏している。 周りは誰も気にかけていない。きっといつもと変わらないからだろう。 だが、どうも様子がおかしい。 突っ伏しているなら寝てるなりしていそうだがそうではなく、震えているように見えた。 熱でもあんじゃねェの? そう思ったオレは声をかけようと近付いてみて、分かった。 コイツ貧乏揺すりしてんだ。しかし龍二にそんなクセはない。 「大丈夫かよ?」 龍二は僅かに顔を上げた。 「…大丈夫だよ。」 ズレたメガネの奥から覗く瞳に、オレは違和感を隠せなかった。 [前へ][次へ] |