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バスはもうすぐで区役所前に到着する。

「センセー、オレもココだから。」

別に、オレ『も』と付け足す必要はないんだろうが。

「おお、そうか。途中まででも送って行ってやってくれよ。」

オレは先生から、龍二のと2人分のバス代を受け取った。

「へーい。」

テキトーに返事をする。だってわざわざ確認するまでもない。

「失礼します。」

そう頭を下げるヤツを見て、改めて二重人格者だと感じた。



案の定、バスを下りると当たり前のようにテメェの荷物を投げ付けて寄越した。

オレは左肩に龍二のスポーツバッグを下げ、右肩をヤツに貸し、ゆっくりと歩き出した。

「せ…先輩!」

オレと龍二は同時に後ろを振り向いた。

「ケガ、大丈夫ですか!?」

恐らく同じバスに乗っていた、ギャラリーの1年生だろう。

「え?うん、大丈夫。」

「あの!良かったらこれ使ってください!!」

一方的に早口でそう言い、それと同じようなスピードで彼女は去って行った。

ポカンと口を開けてる龍二の手には、真っ白いふわふわなタオル。

「俺、別に今、」

それをバッグにしまえと、オレに渡す。

「汗かいてないのにな?」

そーゆーんじゃねェだろうよ。アホ。






「で。お前はなしてウチ来てんだよ。」

「うん。何でだろう?」

「つーか超腹減った。もダメ、死ぬ。」

「俺も。」

「俺も、じゃねェよ!」

オレはサンダルを突っかけて外の階段を下りた。

母親が営んでいる階下の美容室のドアを乱暴に開ける。

「メシ!」

ちょうど客はなく、母親は自分にコーヒーを淹れていた。

「冷蔵庫に焼きソバが入ってるわよ。」

それを聞いたオレは今しがた下りて来た階段を駆け上がり、冷蔵庫にまっしぐら。

「ッんだよ、面倒くせェ。」

予想通り。それは出来上がってラップされているものではなく、刻まれた野菜と袋に入った麺だった。

火にかけたフライパンに油をひく。

「かつぶしかけて。かつぶし。」

「分ーってるよ、ちっと待ってろ。」

オレは豚肉を炒め始めた。

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